例・類型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/14 09:42 UTC 版)
長谷川亮一は先行する研究もふまえつつ、偽史の例・類型として以下のようなものを挙げた。 自民族起源論(同祖論) 自民族の出自を他の民族(古代文明の創始者などの“優秀な”民族)に強引に結びつけようとするもの。 超古代文明論 古代に現代文明の水準をはるかに超える文明が存在したとするもの。しばしば、その古代文明の創設者が自民族の祖であるとする。 陰謀論 世界の歴史は(概ね)、特定の組織がくわだてた陰謀によって動かされている、とする説。陰謀を練っているのは秘密結社であるとしばしば主張される。 歴史修正論 (学会などでも、また一般でも)歴史的事実とされているものを、ただの虚構だと断定したり、歴史的事実に一般的な解釈とはかけはなれた解釈を下したりするもの。 ロバート・キャロルは、偽史というのは(たとえば)次のような作為的な歴史だ、とした。 神話や伝説やサーガやそれに類する書きものを、文字通りに本当に起きたこと、と見なしてしまう。 昔の歴史家たちが残した記述を、批判的にあるいは懐疑的に読むこともせず、彼らの記述を ただ真に受け、昔の歴史家の記述のまちがいを明らかにしてくれるような実証的あるいは論理的な証拠を無視してしまう。 現在の何らかの政治的な論点や宗教的な論点を支持しようとすることのほうが主たる目的として語られ、過去に関する事実を見つけることについてはないがしろにしてしまう。 歴史というのは神話をつくりだすことなのだと主張する。伝統的なアカデミックのスタンダードを用いれば、複数の異なる歴史と歴史を比較ができる、ということを拒否。つまり伝統ある学術のスタンダード(正確性、実証性、論理的一貫性、関連性、完全性、公正であること、誠実であること、等々等々)を拒み、モラルや政治の土俵にしか立とうとしないこと。 昔の文書を用いる時に、えこひいきがあり、自分の論点に都合のよい文書は好意的に扱い、自分の論点に都合の悪い文書は無視したり棄却する。 エスノセントリズム(自民族中心主義、自民族優越主義)というのも、その熱情のゆえにしばしば偽史を作り出す原因になってきた、と指摘されることがある。自分の民族に対する過度の愛着や、近隣の他民族に対する過度の敵愾心によって、偽のお話をつくりだしたりそれを好んで選びとってしまうというのである。 現代の一般市民、各国の国民の日常的言動においても、自国を中心とした視点でそれぞれが信じたがっている歴史をつくり出したり選んだりして、それがまことしやかに語られていることがあるという。これは世界各地どこでも見られることではある。 また、イデオロギーの対立がある時にしばしば偽史が登場する、ということも指摘されることがある。
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