仮説への反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/22 14:00 UTC 版)
バティギンは、彼とブラウンの研究で行われたシミュレーションの結果を解釈する際に慎重を期し、「プラネット・ナインがカメラに捉えられるまではこれは実在のものとはみなされない。我々が今持っているのはエコーである」と述べている。ブラウンは、プラネット・ナインの存在可能性を 90% と見込んでいる。また彼らの研究論文を前もって知っていた数少ない研究者の一人である Gregory P. Laughlin は 68.3% と見込んでいる。この説に懐疑的な科学者たちは、解析に用いられる太陽系外縁天体のさらなる追加や、撮影による確認を通じた最終的な証拠といったより多くのデータが必要だとしている。ブラウンはこの懐疑的な意見には同意しているが、それでも新しい惑星を探すのには十分なデータがあると考えている。 プラネット・ナイン仮説は何人かの天文学者や科学者に支持されている。NASA惑星科学部門のディレクターであるジム・グリーン(英語版)は「証拠は以前より強固になっている」と述べている。しかしグリーンは観測されている遠方の eTNOs の動きは他の仮説で説明できる可能性もあるという点も忠告し、カール・セーガンを引用して「途方もない主張には途方もない証拠が必要だ」と述べている。マサチューセッツ工科大学の教授である Thomas Levenson は、現在のところ、プラネット・ナインは太陽系の外部領域について現在分かっている全てのことに対する唯一の満足できる説明であるように思えると結論付けた。また アストロノミカルジャーナルに掲載されたバティギンとブラウンの論文の査読を行った天文学者である Alessandro Morbidelli は、「私にはバティギンとブラウンが提示したものに変わる説明は見当たらない」と同意した。 天文学者の Renu Malhotra はプラネット・ナインの存在については分からないとの立場を取っているが、彼女とその同僚が行った研究では、eTNOs の軌道が傾いているように思われること、またこの傾きはプラネット・ナイン以外の他の方法での説明は難しいということを発見している。彼女は「我々が見つけたずれの大きさは奇妙なものだ」と述べ、「私にとって、これは私がこれまでに遭遇した中で最も興味深いプラネット・ナインの証拠である」としている。 プラネット・ナインの存在に懐疑的な様々な意見も存在する。アメリカの宇宙物理学者 Ethan Siegel は、他の惑星系では一般的に存在するが太陽系には存在しないスーパー・アースは過去には存在し、太陽系初期の力学的な不安定な時期に少なくとも一個が太陽系外に弾き出されたと考えているが、太陽系内に未発見の惑星が存在するという考えには懐疑的なコメントをしている。また惑星科学者の Harold F. Levison は、弾き出された惑星がオールトの雲の内側に留まることができる確率はわずか 2% 程度だと考えており、もしその惑星が安定な軌道に入った場合は多くの天体がオールトの雲から投げ出されたはずだと推測している。 2020年にはOuter Solar System Origins Survey (OSSOS)とDark Energy Survey(DES)の調査結果により、プラネットナインの仮説に対して更に懐疑論が登場した。 OSSOSは800を超える太陽系外縁天体を記録し、DESは316の新しい天体を発見したが、 いずれの調査においても観測された天体のうち、軌道の偏りの証拠はないと結論付けられた。実質的にすべての天体の軌道はブラウンらが意図した第9惑星ではなく、物理現象によって説明できるとしている。 研究者の1人であるSamantha Lawlerは、今回観測した800の天体に比べるとブラウンらによる14個のサンプルは遥かに少なく、プラネットナイン仮説は「詳細な観察に耐えられない」と述べた。
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