人口統計と優生学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 01:28 UTC 版)
「ウィリアム・ショックレー」の記事における「人口統計と優生学」の解説
晩年のショックレーは、人種、知能、優生学といった問題に興味を持つようになっていった。本人はこの仕事が人類の遺伝的未来にとって重要であり、自身の経歴の中でも最も重要だと考えていたが、そのような政治的な独特の見解を表明することは彼の評判を傷つける結果となった。左翼とも右翼ともとれる立場を表明する理由を問われ、ショックレーは「自身の科学的才能を人類の問題を解決するために応用する」のが最終目標だと応えた。 ショックレーは、知的レベルの低い者ほど生殖率が高い現状は種族の退化をもたらすとし、知的レベルの低下は文明の衰退をもたらすとした。ショックレーは自分が正しいと証明されたならば、科学界は遺伝・知能・人口統計の傾向などを真剣に研究し、政策転換を促すべきだと主張した。 ショックレーは白人にも黒人にも同様の問題が起きているとしたが、特に黒人の方が状況が悪いとした。ショックレーは1970年の国勢調査の結果から、白人の単純労働者は平均で3.7人の子をもうけるが、白人の熟練労働者では平均で2.3人の子をもうけ、黒人ではその値がそれぞれ5.4人と1.9人になるとした。IQが遺伝に影響されるという彼の考え方によれば、黒人はIQが低くなっていくという結論になる。これについてショックレーが学術雑誌に書いた記事や大学などで行った講演は、心理学者シリル・バートの著作に一部基づいている。ショックレーはまた、IQが100未満の者には無料で不妊手術を受けさせるべきだと提案している。 ショックレーは Robert Klark Graham が創設した精子バンク Repository for Germinal Choice に精子提供している。この精子バンクは「ノーベル賞受賞者の精子バンク」と報道されたこともあり、ショックレーを含む3人のノーベル賞受賞者の精子を保管している。ただし、ショックレー以外の精子提供者の名は明らかにされていない。しかしショックレーが人種差別的発言を繰り返したせいで、この精子バンクにとっては逆宣伝となり、他のノーベル賞受賞者の精子を提供してもらえなくなった。 精子バンクの件がニュースになっていた1980年8月、PLAYBOY誌にショックレーの長いインタビュー記事が掲載された。同誌の発行人であるヒュー・ヘフナーはショックレーの考え方に共感していたわけではないが、そのインタビューでショックレーは自身の優生学的見解と一般的な人種的偏見の違いを説明し、持論を多くの読者に対して擁護する機会を与える結果となった。 1981年、Atlanta Constitution 紙がショックレーを「ヒトラー主義者」と呼び、その考え方をナチにたとえたことから、ショックレーは同紙を名誉毀損で訴えた。ショックレーは裁判に勝利したが、賠償額はわずか1米ドルだった。 晩年、ショックレーはメディアとのやりとりに慎重になった。レポーターとの電話は常に録音し、それを書き起こしたものを書留で相手に送った。時には話を始める前に彼の業績について簡単なクイズを出すこともあった。 Daniel J. Kevles はショックレーを「人種差別主義者で生物学を知らない人物として嘲笑されている」とした。人類学者の Roger Pearson はショックレーを擁護し、ショックレーをタブーを破って人種間の差異を率直に議論した人物だとし、その考え方が世の中に不安を与えるものだったためにメディアによって悪者にされたとしている。
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