交感神経イメージング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 07:09 UTC 版)
「シンチグラフィ」の記事における「交感神経イメージング」の解説
交感神経イメージングとしてはMIBGシンチグラフィが知られている。MIBGはノルアドレナリンの生理的アナログである。交感神経終末でノルアドレナリンと同様に摂取、貯蔵、放出が行われる。節後性交感神経の機能を評価できるため、各種心疾患の局所的交感神経障害、神経変性疾患の自律神経障害、糖尿病の自律神経障害の評価に用いられる。 H/M比とwashout rate(WR) 評価はH/M比とwashout rateによって行われる。心臓(H)と上縦隔(M)のROIの平均カウントの比率を計算する。正常値は施設によって異なるが低エネルギーコリメーターを使用している場合は後期相で2.0~2.6程度であり、中エネルギーコリメーターを使用している場合は2.6~3.4である。WRは早期相心臓ROIカウントと後期相心臓ROIカウントをもとに計算され、交感神経機能の指標と考えられている。H/M比の低下はレビー小体病であるパーキンソン病、びまん性レビー小体病、純粋自律神経機能不全(PAF)などで認められる。通常ROIは前期相の方が低いものの、レビー小体病では後期相の方が低くWRの亢進を伴っている。通常は後期相H/M比を結果とする。検査の標準化のためsmartMIBGなどのソフトウェアが開発されている。 検査意義 パーキンソン病ではMIBG集積低下が起立性低血圧、圧反射異常、心拍変動異常に先立って出現するため早期診断で重要である。多系統萎縮症などでは自律神経障害は認められるが節後線維障害ではない(間脳や脊髄中間外側核)ため、H/M比の低下は認められていない。また拡張型心筋症においてΒ遮断薬の効果の事前予測のも用いられる。iLBD(生前パーキンソン症候群は明らかではないが剖検時に偶然にレビー小体が認められる例で、発症前のPDあるいはDLBと考えられる)が60歳以上の正常剖検例の8~17%の頻度で存在するため注意が必要である。 服用薬剤の影響 MIBG集積に影響をおよぼす薬剤についてはさまざまなものがあげられているが、臨床的に問題になるのはノルアドレナリントランスポーターをブロックする三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SNRI、レセルピン(顆粒モノアミントランスポーターをブロックする)である。これらの薬剤は検査前に休薬する必要がある。パーキンソン病治療薬の中でセレギレンは検査に影響するという報告もあるが通常の容量ではほぼ影響しないと考えられている。 合併症 心疾患や糖尿病性神経障害はMIBGシンチに影響をおよぼす。しかし虚血性心疾患ではSPECT画像で局所的な低下は認められても一般的なプラナー正面像でレビー小体病で認められるような無集積は認められない。心不全では典型的には早期像に比べ後期像の強い低下が認められる、しかしNYHAⅠやⅡではプラナー正面像の早期像でレビー小体病で認められるような無集積は認められない。糖尿病では糖尿病性神経障害を合併しなければMIBG集積低下はなく、少なくともプラナー正面像で無集積になることはない。
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