亡命者たち
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亡命者たち
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/24 14:24 UTC 版)
『マクベス』の3人の魔女たちが魔術を使った。呪いをかけられたのは地球から火星に向かう1台の宇宙船だった。乗組員たちは原因不明の病で死にかけていた。毎晩のように悪夢にうなされた。夢のなかには吸血鬼や狼男がでてきた。ありえないことだった。怪奇小説の類は百年も前に焼かれてしまったはずだった。ハロウィーンが法律で禁じられ、クリスマスが廃止された年に燃やされたのだ。隊長は歴史博物館からそれらの本を持ち出した。ポー、ストーカー、ジェームズ、アーヴィング、ホーソーン、ビアス、キャロル、ブラックウッド、ボーム、ラヴクラフト…。火星ではポーたちが奔走していた。本の最後の一冊が無くなってしまえば、彼らも死んでしまう。彼らは科学者によって征服された地球から火星に亡命してきたのだった。いま地球にいるのは孤独で実際的な人間ばかり。目を光らせた精神分析家、利口ぶった社会学の教授、口角泡を飛ばす道徳論者、非のうちどころのない両親たち…。ポーはディケンズにも協力を求めたが、ディケンズは自分の作品はお前たちとは違うと言い張った。そうこうしているうちにロケットが到着してしまった。新世界にたどり着いた隊長は、旧時代の書物のページをやぶき、火の中に投げ込んだ。悲鳴が聞こえた。湖のほとりの緑色の街が崩れていった。スミスは言った「オズのエメラルドの都…」。隊長は言った「スミス!あす精神分析医に看てもらえ」。火星には誰もいなくなった。
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