五瀨命とは? わかりやすく解説

いつせ‐の‐みこと【五瀬命】


いつせのみこと 【五瀬命】


彦五瀬命

(五瀨命 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/27 10:21 UTC 版)

五瀬命
菊池容斎前賢故実』より)

彦五瀬命(ひこいつせのみこと)は、記紀等に伝わる古代日本皇族

日本書紀』では「彦五瀬命」や「五瀬命(いつせのみこと)」、『古事記』では「五瀬命」と表記される。

神武天皇(初代天皇)の長兄である。

関係略系図(表記・記載は『日本書紀』本文による)

鸕鶿草葺不合尊
 
玉依姫
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
彦五瀬命 稲飯命 三毛入野命 神日本磐余彦尊
1 神武天皇
 
 
 
皇室

記録

日本書紀』・『古事記』によると、鸕鶿草葺不合尊海神の娘の玉依姫との間に生まれた長男である。弟に稲飯命三毛入野命・神日本磐余彦尊(神武天皇)がいる。

彦五瀬命は弟たちとともに東征に従軍したが、浪速国の白肩津(あるいは孔舎衛坂)での長髄彦との交戦中に長髄彦の放った矢に当たった。彦五瀬命は「我々は日の神の御子だから、日に向かって(東に向かって)戦うのは良くない。廻り込んで日を背にして(西に向かって)戦おう」と助言し、一行は南へ廻り込んだ。

しかし紀国の男之水門に着いた所で、彦五瀬命の射られた傷が悪化した。この時に彦五瀬命が「賊に傷つけられて死ぬとは」と雄叫びしたので、その地は「雄水門(おのみなと、男之水門)」というとする。その後『日本書紀』によると紀国竈山で亡くなり、竈山に墓が築かれたという。ただし『古事記』では紀国男之水門で亡くなったとする。

彦五瀬命 竈山墓
和歌山県和歌山市

は、宮内庁により和歌山県和歌山市和田にある竈山墓(かまやまのはか、北緯34度12分4.97秒 東経135度12分14.93秒)に治定されている[1][2]。宮内庁上の形式は円墳[1]

彦五瀬命の墓について、『日本書紀』では前述のように竈山に墓が築かれた旨が記されている。延長5年(927年)成立の『延喜式諸陵寮諸陵式)では「竈山墓」の名称で記載され、紀伊国名草郡の所在で、兆域は東西1町・南北2町で守戸3烟を付すとしたうえで、遠墓に分類する(紀伊国では唯一の陵墓)。これに先立つ持統天皇5年(691年)には有功の王の墓には3戸の守衛戸を設けるとする詔が見えることから、この頃に『日本書紀』・『古事記』の編纂と並行して、『帝紀』や『旧辞』に基づいた墓の指定の動きがあったと推測する説がある[3]。またその際には、日本武尊墓(伊勢)・彦五瀬命墓(紀伊)・五十瓊敷入彦命墓(和泉)・菟道稚郎子墓(山城)をして大和国の四至を形成する意図があったとする説もある[3]

彦五瀬命の神霊を祀る神社としては、竈山墓の南麓に竈山神社式内社)が鎮座する。また、岡山県岡山市東区の安仁神社式内社)では神武天皇の兄(あに:安仁)として、稲氷命(稲飯命)・御毛沼命(三毛入野命)とともに祀られている。

考証

彦五瀬命の名の「五」は厳(いつ)・斎(いつ)、「瀬」は神稲を意味するとされる[4]。このことから、『古事記伝』では穀物や食料の神の意と解している。

脚注

  1. ^ a b 宮内省諸陵寮編『陵墓要覧』(1934年、国立国会図書館デジタルコレクション)7コマ。
  2. ^ 『宮内庁書陵部陵墓地形図集成』 学生社、1999年、巻末の「歴代順陵墓等一覧」表。
  3. ^ a b 仁藤敦史 「記紀から読み解く、巨大前方後円墳の編年と問題点」『古代史研究の最前線 天皇陵』 洋泉社、2016年、pp. 13-16。
  4. ^ 五瀬命(国史) & 1979年.

参考文献

関連項目




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

五瀨命のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



五瀨命のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
中経出版中経出版
Copyright (C) 2025 Chukei Publishing Company. All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの彦五瀬命 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS