中世のミクソリディア旋法とヒポミクソリディア旋法
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「ミクソリディア旋法」の記事における「中世のミクソリディア旋法とヒポミクソリディア旋法」の解説
元々は ギリシャの理論の伝統的なハルモニアイ(harmoniai)の1つとして指定されて用いられ、その名は2世紀の理論家プトレマイオスが7つのtonoi(あるいは移調)を定義する際にも他の6つと共に用いられた。4世紀後、 ボエティウスがプトレマイオスの著書をラテン語に翻訳したが、この段階ではまだ音階ではなく転調の種類の名称という位置づけであった。聖歌理論が9世紀に初めて体系化されたとき、7つの旋法に8番目のヒポミクソリディア旋法(当初はHypermixolydian、後にHypomixolydianへ変化)が加えられて著者不明の論文音楽論別記(Alia Musica)の中で再び用いられた。この論文の説明は新しい解釈(Nova expositio)と呼ばれ、8つの全音階のオクターヴ種ないし音階のセットの1つとしての新しい概念を初めて与えた。 ミクソリディアの名前は、中世教会音楽における8つの教会旋法の1つ第七旋法として用いられるようになった。この旋法はギリシャの旋法のような白鍵でのロ音から上のロ音までを指すものではなく、ト音からト音へのナチュラルの音階で構成される正格旋法(終止音から1オクターヴ上の終止音までの音域を用いる旋法)となった。以下の2通りに定義された。 ト音から1オクターヴ上のト音までの全音階のオクターヴ種。 フィナリス(最後の音)にト音をとる旋法。そのアンビトゥス(教会旋法の音域)は下のヘ音から上のト音までをとり、許された場合には更に最高音は上のイ音まで、最低音は下のホ音まで広げられた。また、二音は対応する7番目の詩編唱定式(psalm tone。または詩編唱式)の朗唱音(reciting note、リサイティング・トーン)とされて、重要な旋律の機能を受け持った。(なお、この朗唱音は正格旋法では原則として終止音の完全五度にあてられており、他にドミナント(dominant)(もしくは、テノール(tenor)、cofinal、レペルクッシオ(repercussio、反響音))とも呼ばれる。) この中世の理論構造は、ト音から上のト音へのナチュラルでの音階を示すミクソリディア旋法の現代の用法につながった。 同じくト音を終止音に持つ変格旋法(終止音の4度下から終止音の5度上までの音域を用いる旋法)はヒポミクソリディア(もしくは"低いミクソリディア") と呼ばれて第八旋法に位置づけられ、ミクソリディアのように以下の2通りに定義された。 二音から1オクターヴ上の二音までをとり、旋法の最終音ト音で分割される全音階のオクターヴ種(例:D–E–F–G + G–A–B–C–D); フィナリス(最後の音)にト音をとり、アンビトゥスは下のハ音から上のホ音までをとる旋法。この旋法でのハ音は、対応する8番目の詩編唱定式の朗唱音とされて、重要な旋律の機能を受け持った。
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