中世のワイバー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 19:14 UTC 版)
中世イングランドでは「ワイバー」という名の二足の竜の図像が印章や紋章に描かれるようになった。13世紀のウィンチェスター伯であるロジャー・ド・クインシーが用いていた印章にワイバーが確認できる。イングランド王・ヘンリー3世の孫にあたる第2代ランカスター伯トーマスと第3代ランカスター伯ヘンリーの兄弟も印章にワイバーを用いていた。紋章においては14世紀初頭からエドムンド・モーリーなどワイバーを紋章に用いていた貴族が存在したことが紋章鑑に記録されている。この紋章鑑には図はなく紋章記述のみが記されているため、エドムンドらの紋章が実際にどのようなものであったのかは不明である。 この時期のワイバーはトカゲのような姿をしており、小さな翼が生えていることもあれば生えていないこともある(Barron 1911)。Scott-Ellis (1904b)はランカスター伯トーマスの印章の盾の左右に配置された怪物を翼の無いワイバーであるとしている。 近世以降のワイバーンと同一視して、中世のワイバーを単純にワイバーンと記す現代の文献は多い。しかしBarron (1911)は中世のワイバーから近世のワイバーンへの変化は形状の変化も伴ったとしており両者を区別している。Allaben (1918)はロジャー・ド・クインシーの印章の竜を指して「ワイバーン、あるいはその最初期の原型であるワイバー」と両論併記する形で説明している。 ロジャー・ド・クインシーの印章 (1250) ランカスター伯トーマスの印章 (1301) ランカスター伯トーマスの印章翼の無いワイバーが描かれている ランカスター伯ヘンリーの印章 (1301)
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