紋章記述
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/21 22:16 UTC 版)
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紋章記述(もんしょうきじゅつ、英: Blazon、ブレイズンまたはブレイゾン)は、紋章学と旗章学において最も頻繁に用いられる、紋章または旗の図柄の正式な説明文である。紋章描写とも訳される。これを一定の規則に従って解釈することで、紋章を描いた紙を含むあらゆる媒体や旗が失われていたとしても、後世の者が適切なイメージを造るか、再建することができる。現代の用途においては、より正確に幾何学的な指定を用いることで旗の図柄を定義することが多くはなったが、本来であれば、紋章又は旗はその紋章記述の言い回しによって以外、つまり図面を主として定義されることはない。
紋章記述を意味する Blazon という単語は、紋章を記述することに特化された共通言語を意味する名詞として用いられると同時に、動詞として、そのような説明を書くという行為のことも指す。紋章以外の他の物、例えばヘラルディック・バッジ、旗及びシールも、紋章記述で記述されることがある。
文法
紋章記述は厳格な公式に従って行われる。紋章の図柄を説明するあらゆる記述は、フィールド(背景)を記述することから始める。大多数のケースでは、Azure のような1つのティンクチャーで始まる。次に、主要なチャージの名前を記述し、そのチャージをどのようなティンクチャーにするかの記述を続ける。例えば、a bend Or (金色のベンド)などである。主要なチャージの後に、その周囲、又は、その上に置かれるあらゆるチャージを続けて記述することができる。
複合シールドは一度に記述された1枚のパネルであり、記述はチーフ(頂部)からベース(底部)に向かって列を記述し、各列の中でデキスター(シールドを持つ者から見て右側)からシニスター(同じく左、向かって右)への、すなわち向かって左からの右へ進行する。
紋章記述は、必ずしもチャージの大きさや配置する位置を厳密に定めるものではないため、それに基づいて図面に起こされた紋章は、描く者によって多くの異なる方法で描かれうる。具体的には、チャージが紋章記述に矛盾しない程度に若干大きかったり小さかったり、間隔が広かったり狭かったりといった具合である。更に言えば、シールドの形は大抵の場合重要ではない。この既知の事実は、ちょうど「A」という文字を様々な異なるフォントで印刷してもやはりそれは「A」という文字であるということとまったく同様と見なすことができる。
イギリスの役人が書類をフランス語で記述したころに紋章学が発達したため、イギリスの紋章学の多くの用語はフランス語が起源である。また、通常英語では形容詞を名詞の前に置くが、紋章記述ではフランス語の語順に基づくため、古来より大部分の形容詞を名詞の後に置く習慣がある。
記述例
紋章記述の記述例をもとに、文法と紋章の図柄への対応を順番に示す。なお、今回の例に挙げている紋章は、実在する紋章をもとにして作成したものである。
紋章記述と解説 | 紋章 | |
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1 | Azure. | |
2 | Azure, a bend engrailed Argent. | |
3 | Azure, a bend engrailed Argent between two bends Argent.
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4 | Azure, a bend engrailed Argent between two bends Argent both charged with a bendlet Azure.
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5 | Azure, on a bend engrailed between two bends Argent both charged with a bendlet Azure a rose gules barbed and seeded proper.
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6 | Azure, on a bend engrailed between two bends Argent both charged with a bendlet Azure a rose gules barbed and seeded proper between two square billets also Azure.
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複雑さ
シールド全体の説明の複雑さは、わずかに1語から複数のシールドを統合した複合シールドを記述している入り組んだ長大な紋章記述まで千差万別である。
- エステルイェートランド(スウェーデン)の紋章
- Gules a Griffin with Dragon Wings, Tail and Tongue rampant Or armed, beaked, langued and membered Azure between four Roses Argent.
- ハンガリーの紋章(1867年)
オーストリア=ハンガリー帝国の一部だったころのハンガリーの1867年の紋章。- Quarterly, I three lions' heads affrontes crowned Or (for Dalmatia); II chequy Gules and Argent (for Croatia); III Azure, a river in fess Gules bordered Argent, thereupon a marten proper, beneath a six-pointed star Or (for Slavonia); IV per fess Azure and Or, overall a bar Gules, in the chief a demi-eagle Sable displayed addextre of the sun in splendour, and senestre of a crescent Argent, in the base seven towers three and four, of the third (for Transylvania); ente en point Gules, a double-headed eagle Proper on a peninsula Vert, holding a vase pouring water into the sea Argent, beneath a crown Proper with bands Azure (for Fiume); overall an escutcheon barry of eight Gules and Argent impaling Gules, on a mount Vert a crown Or, issuant therefrom a double cross Argent (for Hungary).[1]
脚注
出典
- Brault, Gerard J. (1997). Early Blazon: Heraldic Terminology in the Twelfth and Thirteenth Centuries, (2nd ed.). Woodbridge, UK: The Boydell Press. ISBN 0-85115-711-4.
- Elvin, Charles Norton. (1969). A Dictionary of Heraldry. London: Heraldry Today. ISBN 0-900455-00-4.
- Parker, James. A Glossary of Terms Used in Heraldry, (2nd ed.). Rutland, VT: Charles E. Tuttle Co. ISBN 0-8048-0715-9.
関連項目
紋章記述
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/12 09:24 UTC 版)
イギリスの国章の正式な紋章記述は次のとおり。 Quarterly, first and fourth Gules three lions passant gardant in pale Or armed and langued Azure (for England), second quarter Or a lion rampant within a double tressure flory-counter-flory Gules (for Scotland), third quarter Azure a harp Or stringed Argent (for Ireland), the whole surrounded by the Garter; for a Crest, upon the Royal helm the imperial crown Proper, thereon a lion statant gardant Or imperially crowned Proper; Mantling Or and ermine; for Supporters, dexter a lion rampant gardant Or crowned as the Crest, sinister a unicorn Argent armed, crined and unguled Proper, gorged with a coronet Or composed of crosses patée and fleurs de lis a chain affixed thereto passing between the forelegs and reflexed over the back also Or. Motto 'Dieu et mon Droit' in the compartment below the shield, with the Union rose, shamrock and thistle engrafted on the same stem.
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紋章記述(図柄)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/12 03:21 UTC 版)
波線によって銀地(白地)と赤地に上下二分割。上部は赤い3本の縁につかず浮いた形のシェブロン。下部は緑の大地から延びる緑色の茎の上に、互いに外側を向いた銀(白)の花を付けた2輪のユリ。
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紋章記述
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/12 02:47 UTC 版)
国章の中央には大またで歩き(passant)右前足で剣を持つ金色のライオンが描かれている。これはスリランカの国旗と同じく、15世紀から19世紀初頭にかけて存在したキャンディ王国(Kandy)の王の旗からとられている。ライオンはマルーン色の円の中央に描かれ、その周りは国花である蓮の花の金色の花びらで囲まれている。その下には伝統的な穀物壷があり、そこから豊かさを象徴する稲穂の束が左右に出て、蓮の花の周囲を取り囲んでいる。 紋章のクレスト(頂上)部分には法輪(ダルマチャクラ)があり、国家の大事な部分には正義による支配と仏教があることを表している。紋章のサポーター部分にはシンハラ人の伝統的な象徴である太陽と月が配されている。
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紋章記述
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/25 05:57 UTC 版)
紋章に描かれている動物(サポーター)は、向かって左にいるのがゾウの鼻を持つ獅子であるガジャシンハ(gajasingha)、右にいるのがシンハ(singha、獅子)である。二匹の動物は、王家のための五層の日傘を捧げ持っている。 その間にあるのはカンボジア式の王冠で、頂上から日の光を放っている。王冠の左右には木の葉のようになった金色のマントが上に向かってたなびき、王冠の下にはローブが垂れ下がり、その手前に青い盾がある。盾の中に描かれているのは、台座のついた皿(タイのパーン(Phan)と同様のもの)が二段重ねられ、聖なる剣とクメール語のオームのシンボルが載せられている図柄である。皿の下には勲章が描かれ、その両側から緑の月桂樹の葉の飾りが皿を囲んでいる。 紋章の下部にある帯には、クメール語で「Preah Chao」(幸いな支配者)、「Krung」(国、王国)、「Kampuchea」(カンプチア / カンボジア)とあり、合わせて「カンボジア王国の国王」と読める。 石に刻まれたカンボジア国王の紋章 カンボジアの王旗
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紋章記述:
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/04/04 19:29 UTC 版)
「銀に青に波状に分割される。上部には羽ばたく2羽の銀のハクチョウが右向きに描かれ、嘴は金色である。下部は金の嘴をもつ赤鷲の頭部があり、両側には青の六角星が添えられる。」
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