ベートーヴェン:三重奏曲 変ホ長調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ベートーヴェン:三重奏曲 変ホ長調 | Trio für Klavier, Klarinette und Violoncello Es-Dur Op.38 | 作曲年: 1802-03年 出版年: 1805年 初版出版地/出版社: Bureau d'art et d'industrie |
作品解説
Op. 38 管楽八重奏曲 Op. 20の作曲家自身による編曲
ベートーヴェンのOp. 20は当時から評判で、多数の編曲版が書かれたことがその人気の高さを物語る。当作品は作曲家の自作編曲で、高音楽器にはヴァイオリンかクラリネットのどちらかを選べるようになっている。なお第3楽章のメヌエット部の冒頭主題はソナチネOp. 49, No. 2と同じである。
編成の縮小に伴う原曲声部の処理は概ね次の通り。ピアノ・パートは、原曲の大部分で主旋律を担うヴァイオリンを含め、主に原曲の弦楽器を担う。チェロは原曲のチェロ・パートではなく、中音域のヴィオラや低音管楽器の声部進行となることが多い。また編成の大きい八重奏稿では楽器やパート数が変わることで音色が多彩に変化していたが、三重奏稿では多くの箇所で、ピアノの伴奏音形の変化が原曲の音色の多様性を賄っている(例:第1楽章61小節~)。
形式に関する大きな変更は、スケルツオ楽章のトリオにおいて、原曲では反復記号による繰返しが編曲では楽器間で声部を交換して書き下ろされていることのみである。但し細部の変更は多く、以下の点が注目される。
M. シュウェイジャーがベートーヴェンの自作編曲の特徴とする、原曲以上の勢いの増大、動機の活用、後続要素の先取は、Op. 38にも見られる。例えば第1楽章第244小節からはチェロが新たに主題動機を奏し、主旋律と動機を呼応する。第2楽章第27小節のクラリネット/ヴァイオリンとチェロの刺繍音形は、推進力を増すと共に第28小節の主旋律の2度進行を先取している。
原曲のコンセプトに影響する変更も見られる。強弱法の変更のほか、例えば第1楽章では伴奏音形や和声リズムに手が加わり、音楽が、呈示部はより躍動的に、再現部では静的になっている所が目立つ(例:主要主題第26小節の低音変化が原曲より早いこと、副主題第73小節以降と第204小節以降の伴奏リズムの変化などに注目)。
このように、ベートーヴェンの他の自作編曲と同じく、原曲にない新たな工夫が凝らされ、編曲に当たって原曲の内容が再度練り直されたと思われる。
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