三澤勝衛とは? わかりやすく解説

三沢勝衛

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/07 00:47 UTC 版)

三沢 勝衛(三澤 勝衛 みさわ かつえ、1885年1月25日 - 1937年8月18日)は、日本地理学者

略歴

長野県更級郡三水村今泉(現長野市信更町)の農家に生まれる。11歳で更級郡更府尋常小学校を、15歳で上水内郡(かみみのちぐん)水内高等小学校を卒業する。農業に従事しながら勉学に励み、18歳の時、更府小学校の補助代用教員となり、翌年、小学校準教員検定に合格し、長野県内各地の学校教諭勤務の後、21歳で小学校尋常科正教員の検定に合格する。1907年(明治40年)23歳で小学校本科正教員の検定に合格し、31歳まで県内各地の小学校訓導を務める。その間に教育学書や哲学書などを多読し、小学校の地理教育や歴史教育に関する論文三編を信濃教育会編『信濃教育』に発表する[1]

1920年(大正9年)、長野県立諏訪中学校(現長野県諏訪清陵高等学校)教諭を務める。地理学、博物科の鉱物学太陽黒点観測をはじめとする天文学の研究に打ち込み、総合的で独創的な風土論を展開した。野外調査を重視し、生徒たちにも実地観察と自分の頭で考える大切さを教え、教え子からは古畑正秋(天文学)、藤森栄一(考古学)、矢沢大二(地理学)、河角廣(地震学)、諏訪彰(火山学)、新田次郎(作家)といった優れた学者、研究者、文化人が輩出している。また、「地域の力」や「地表現象」といった独自の用語によって地理学を論じ、小田内通敏との交流の中で、歴史的考察を含めた経済地理学的な地域研究を行なった。『人生地理学』の著者牧口常三郎と親交があり、牧口は、三澤の亡くなる前年、自宅を訪問している。諏訪清陵高校の敷地内には、膨大な量の研究資料を収めた「三沢勝衛先生記念文庫」がある。

三沢の「風土」は、大地の表面と大気の底面との触れ合う接触面のことで、三沢によると、ここで大地と大気とは化合し、さまざまな風土が生じ、風土を知り尽くすことが自然を活用した産業を育成する基礎であるという。たとえば八ヶ岳山麓のマツ(松)は寒冷地に多くの人々が居住できるための努力で、貴重な宝であると賞賛した。また信州の冬の厳寒と乾燥を利点視し、凍み豆腐寒天づくりなど産業振興を勧めた。

没後70年以上を経てから著作全集が発行されるなど、今日にも通じる思想を残した人物である。

著書

脚注

  1. ^ 岡田俊裕著 『 日本地理学人物事典 [ 近代編1 ]』 原書房 2011年 355ページ

関連文献・資料

  • 「郷土歴史人物事典 長野」第一法規 1978年
  • 木村信夫「自然と生きる農村説く--先駆者三澤勝衛、信州の教壇で「風土学」に心血」(『日本経済新聞』2009年4月17日(金)朝刊14版36面)
  • 滝澤忠義『信州の人物余聞』2010年

関連項目

外部リンク


三澤勝衛

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信州の地理山脈」の記事における「三澤勝衛」の解説

詳細は「三沢勝衛」を参照 三澤勝衛(みさわかつえ、1885-1937)は、大正後期から昭和初期活動した地理学者である。最終学歴高等小学校卒ながら文部省師範学校中学校高等女学校教員検定試験文検地理科に合格して旧制中学校教員務め、その傍ら太陽黒点観測卓越風などの小気候景観論風土地理教育など多岐にわたる研究行った小田内通敏辻村太郎田中啓爾といった大学教鞭を執る一線地理学者学術的交流があったものの、三澤はほとんど独学研究進め、その成果大学教授にも勝るものであった人文地理学的な研究の中では、1926年に『地理学評論』へ掲載された「諏訪製糸業地理学考察」が最良であると斎藤評する三澤人文地理学研究最終的に辻村らの景観論田中らの地誌学派を離れ風土論に至った大気大地接触面で展開する現象相互作用により形成され有機体を「風土」と呼び風土産業風土調和した産業)の振興風土生活(風土即した生活)を営むべきとした。また地理教育題材となるのは大気大地接触であるから生徒にとって身近な郷土題材とすべきと説いた

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