3つの世界
三つの世界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 21:03 UTC 版)
地獄傍生鬼 人及六欲天 名欲界二十 由地獄洲異 此上十七處 名色界於中 三靜慮各三 第四靜慮八 無色界無處 由生有四種 依同分及命 令心等相續 —世親、『阿毘達磨倶舍論』卷第七、 以下の説明は、4世紀から5世紀頃にヴァスバンドゥ(世親)が著した『阿毘達磨倶舎論』(『倶舎論』)に依る。 欲界(よくかい、よっかい、梵: kāma‐dhātu) 欲望にとらわれた淫欲と食欲がある衆生が住む世界。無色界および色界の下に位置する。本能的欲望(カーマ)が盛んで強力な世界。八大地獄から六欲天までの領域であり、『倶舎論』においては「五趣」(5つの生存状態)地獄、餓鬼、畜生、人、天の5種の世界が欲界に属するとされる。ただし、『倶舎論』を奉ずる説一切有部と対抗した中観派や、のちの大乗仏教諸派は、これらに修羅道を加えて「六道」(6つの迷える状態)とした。いずれの見解においても、地下の世界と、地表の世界と、空中の世界(天界)の最下層とが、欲界に属する。 色界(しきかい、梵: rūpa-dhātu) 淫欲と食欲の2つの欲を離れた衆生が住む世界。欲望は超越したが、物質的条件(色、サンスクリット語ラテン翻字: rupā)にとらわれた生物が住む境域。色天や色界天ともいう。有色(うしき)ともいう(欲界と色界の2界をさす場合もある)。欲界の上、無色界の下に位置する。色とは物質のことであり、色界とは物質的な世界という意味。欲界とひとしく物質的世界ではあるが、それほどに欲望が盛んではないところを単に色界とよぶ。色界には、清らかで純粋な物質だけがあるとされる。欲や煩悩は無いが、物質や肉体の束縛からは脱却していない世界である。四禅を修めた者が死後に生まれる世界。色界は禅定の段階によって四禅天に大別される。天界の上層は色界に属し、またそれを細かく17天(経典によっては18天または16天)に分ける。また、初禅の一部と欲界を合わせて「一小千世界」と呼ぶ。 なお、鳩摩羅什は『法華経』序品で、色界の最上位である色究竟天を(後述の)有頂天としている。 無色界(むしきかい、梵: ārūpa-dhātu) 物質的なものから完全に離れた衆生が住む世界。欲望も物質的条件も超越し、精神的条件のみを有する生物が住む境域。欲界および色界よりも上位にあり 、天界の最上層に位置する。空間を超越する無色界は、厳密には色(かたち)を持たない。ゆえに、色界の上方に存在するわけではないが、便宜上三界のなかでは一番上部に置かれる(右図参照)。 物質が全く存在せず、心の働きである受・想・行・識の四蘊だけからなる世界。無色界は四天に分けられ、その最高処を有頂天(非想非非想天、非想非非想処)という。
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