万葉仮名の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 09:23 UTC 版)
万葉仮名の使用回数あいうえお阿(26) 伊(19) 宇(10) 衣(2) 於(9) かきくけこ可(10)加(8)賀(1) 伎1(12)岐1(4) 久(17) 祁1(4)家1(1)氣2(1)鷄1(1) 己2(10) が ぐげご賀(3)我(1)加(1) 具(2) 義2(1) 期2(2) さしすせそ佐(17) 志(19)師(3)止(1) 須(18) 世(2) 曾2(2)蘇1(2) ず ぞ 須(1)受(1) 曾2(2)叙2(1) たちつてと多(29) 知(12) 都(32) 弖(5) 止2(46)刀1(1)等2(1) だぢづでど太(4) 遲(1) 豆(5) 弖(3) 止2(1)等2(1) なにぬねの奈(10) 尓(27) 奴(1) 祢(3) 乃2(52)能2(2) はひふへほ波(23)婆(2) 比1(23) 布(10) 閇2(8)覇1(3) 保(7) ばびぶべ 婆(3) 鼻1(1) 夫(1) 閇2(2)倍2(1) まみむめも麻(34) 美1(23)微2(3)弥1(2) 牟(12)无(1) 米2(13)賣1(2) 毛(21)母(5) や ゆ よ夜(7) 由(4) 与2(13) らりるれろ羅(1) 利(22)理(4) 流(1) 礼(19) 呂2(12) わゐ ゑを和(6) 爲(2)胃(1) 恵(2) 乎(16) しゃ舍(2) 万葉仮名には音仮名と訓仮名がある。音仮名とは、漢字のもつ意味を捨て、漢字の「音」を借りて日本語を書きあらわす仮名であり、万葉仮名の大部分を占める。訓仮名とは、「訓」を利用して日本語を書きあらわす仮名である(韓藍花歌切#音仮名から訓仮名へを参照)。 本歌と同じ時代の『万葉集』では、音仮名と訓仮名を規律なく交ぜて用いているが、本歌は記紀の歌と同様にすべて音仮名で書かれている。しかし、記紀と違い、本歌で用いている万葉仮名はごく限られたものによっている。例えば、『日本書紀』では、「く」は、「久・玖・句…絇・衢・寠」など約15種類、「し」は約35種類に至り、まるで漢字の知識を誇示するかのようであるが、本歌では前者は「久」のみ、後者は「志・師・止」の3種類だけである。これについて大島正二は、「本歌が仏歌であるがために、仏の功徳を賛美し、横行するさまざまな悪を戒めたいという願いに主眼がおかれ、平易な文字に統一されたのであろう。(趣意)」と述べている。 本歌では、厳密な区別はないものの、「久(く)」と「具(ぐ)」、「都(つ)」と「豆(づ)」、「比(ひ)」と「鼻(び)」など、字源の清濁に基づいた用字になっており、また、拗音の「釈迦」を「舍加」と記している。本歌の用字を他の歌と比較すると以下のごとくである。 「胃」を「ゐ」の仮名としているのは他に例がない。 「舍」を「しゃ」としているのは特異な例。 「鷄1」(け)、「覇1」(へ)、「微2」(み)は比較的用例が少ない。 「須」(ず)、「等2」(ど)は濁音としては用例が少ない。 『古事記』の歌には、あ行の「え」がない代わりに、や行の「延」がある。 本歌には、あ行の「え」の「衣」があって、や行の「え」がない。 や行の「い」とわ行の「う」は『古事記』と本歌の双方にない。 「義2」(げ)、「鼻1」(び)は記紀と一致せず、その用例が少ない。 以上の比較結果から北里闌は、「本歌は、『古事記』をまず『日本書紀』と比較し、次いで『風土記』、『万葉集』以下の各書と比較した最後に書かれたことがわかる。」と述べている。 上代特殊仮名遣の区別は概ね保たれている。例えばミ甲類の「美1・弥1」が「見・御」の仮名として用いられる一方、乙類の「微2」は「身」の仮名として用いられており、両者の区別ははっきりしている。同様の区別が「ケ・ヘ・メ・ソ」などにも見られる。しかし「ト」については万葉集で甲類のトを使用する「たふと(尊)・つとめ(勉)」について、いずれも乙類の「止2」が使われており、すでにトの甲乙の区別は失われていたようである。
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