リーマン、曲面の連結度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 13:06 UTC 版)
「ホモロジー (数学)」の記事における「リーマン、曲面の連結度」の解説
1851年、ベルンハルト・リーマンは学位論文「複素一変数関数の一般論の基礎」の中で曲面の連結度(connectivity)というものを考えた。これは次のように定義される。まず、曲面の境界上の2点を結ぶ曲線を横断線と呼ぶことにする。曲面が円板のような形をしている場合には、横断線で曲面を切断すると曲面が2つに分かれる。どのような横断線で切断しても曲面が2つに分かれるとき、そのような曲面を単連結と呼ぶことにする(現代の定義とは異なる)。ある任意の曲面が n 本の横断線によって切断したとき m 個の単連結な領域に分割されるならば、その曲面の連結度を n − m と定義する。例えば円板の連結度は −1 であり、円板から小さな円板をくり抜いた円環の連結度は 0 である。 この論文では考えている幾何学的対象に境界が存在することを仮定している。そして横断線というツールを使って連結度という数字(位相的不変量)が定義されている。リーマンは切断のアイデアをカール・フリードリヒ・ガウスから学んだとエンリコ・ベッチに語っている。ガウスは位置の幾何学、つまり現在トポロジーと呼ばれている数学の一分野について自分の研究成果を発表することは無かった。しかし位置の幾何学について書いた文章が数多く遺されており、終生興味を持ち続け熱心に研究していた。ガウスが位置の幾何学を重視していたことはリーマンにも影響を与えた。 1857年、リーマンは「アーベル関数の理論」と題した論文を公表する。この論文で再び曲面の連結性の数(connectedness number)という概念を考える。これは次のように定義される。曲面の上に n 本の閉曲線の族があり、どの閉曲線の組み合わせを取っても部分曲面の完全境界にならなかったとする。さらに、この族にどのような閉曲線を加えてもこの性質を満たさなくなるとする。このとき、この曲面を n + 1 重連結であると呼ぶ。例えば、円板は1重連結であり、円環は2重連結である。連結性の数は境界の無い曲面に対しても定義することができ、例えば球面の連結性の数は1である。連結性の数の定義に完全境界という概念を使ったのは正則関数を領域の境界に沿って線積分すると0になることによる。 ここには、考えている曲面の境界は考えず、連結性の数の定義においてツールとして用いる曲線が境界かどうかを考えるという、発想の転換があり、サイクルのなす群をバウンダリのなす群で割るというアイデアの原型を見ることができる。
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