モーツァルトの影響
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実際のところベートーヴェンが『ヴェスタの火』に書いた音楽は間違いなくベートーヴェン的なもので、幕を開けつつある彼のキャリア中期特有の性格を有している。にもかかわらず、モーツァルトからの明らかな影響が認められている。ロックウッドは「止めるんだ!(Halt ein!)」の箇所へベートヴェンが付した音楽に、3人の少年の介入によりパパゲーノが自殺を思いとどまるという『魔笛』で対になる場面の模倣を見出している。ヴォリヴィアとサルタゴネスが変ホ長調、6/8拍子で歌う愛の二重唱は、『魔笛』で同じ調性、拍子でパミーナとパパゲーノによって歌われる「愛を感じる男の人達には(Bei Männern welche Liebe fühlen)」を想起させる。ベートーヴェンは1801年にこの主題を用いてチェロとピアノのための変奏曲を作曲している。 ロックウッドは形式面にもモーツァルトの先行作品を認める。それは「Introduzione」である。ベートーヴェンの書いた1場面は独立可能なオペラ中の最初の1部分を形成しており、話の展開と和声の計画の両面に関してある程度の全体像を示しているというのである。ロックウッドはこの「Introduzione」を「ミニ演劇」と呼んでいる。モーツァルトのオペラのうち3作品『ドン・ジョヴァンニ』、『コジ・ファン・トゥッテ』、『魔笛』は「Introduzione」で幕を開ける。ベートーヴェンの「Introduzione」は和声構造に『魔笛』を思わせるところがある。先述の下降する調性の移り変わり(ト短調、変ホ長調、ハ短調、ト長調)は、『魔笛』の「Introduzione」部で同様の調が上昇する並び(ハ短調、変ホ長調、ト長調、ハ長調)に倣っている。 ネドバル(2009年)はベートーヴェンがリブレットの人物的側面よりも道徳を強調しており、これは『魔笛』全体を通じて認められる過度な道徳化を受けたものだと言及している。対して、ヨーゼフ・ヴァイグルが同じ詞にあてた音楽は人物の感情と経験に重点を置いている。
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