マジェラスの実験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 01:06 UTC 版)
マイケル・マジェラス(en:Michael E. N. Majerus)は、ケトルウェルの実験手法に対するさまざまな科学的に正当な批判を解決するために、より精巧な実験を2000年に設計し、2001年からから2007年にかけて実施した。 このマジェラスの新たな実験は、ケトルウェルの実験に関して「蛾の密度が高くなりすぎたのではないか」「昼間に放たれた蛾はうまく隠れ場所を見つけられなかったのではないか」「捕獲された野生の蛾と、研究室育ちの蛾で行動が異なるのではないか」「他の地域から連れてこられた蛾は、本来と異なる行動をとるのではないか」といった疑問に答えるため、より厳密にデザインされた。 2001年から2007年にかけてケンブリッジで行われた研究において、マジェラスは蛾が自然に止まる位置を記録した。実験に使われた135匹の蛾の半分以上が枝に止まり、そのほとんどは枝の下部で、35%が木の幹でほとんどが北側に、13%が小枝の上下に止まった。 ジュディス・フーパーとのやりとりの後、マジェラスはコウモリによる捕食が結果に影響を与えたかどうかを調べる実験を追加した。コウモリは視覚ではなくエコーロケーションによってエサを追いかける。そしてコウモリはどちらの色の蛾も等しく捕食することがわかった。マジェラスはまた蛾を食べている鳥の数種を観察し、これらのデータ全体から、彼は鳥の差別的な捕食がケンブリッジの調査期間における暗化個体の相対的な頻度低下の主要因であると結論した。マジェラスは彼の実験結果がタットとケトルウェルの結論を完全に支持すると述べた。そして「オオシモフリエダシャクの増減がもっとも視覚的にインパクトがあり、進行中のダーウィン的進化を簡単に理解できる例なら、教えられるべきだ。結局のところ進化の証拠を提示している」と述べた。 実験は最終的に2007年にかけて実施された。マジェラスの死後、この研究結果はイギリスとアメリカの遺伝学者によって解析され、2012年に論文として発表された。論文ではこの蛾の暗化が鳥の捕食とカモフラージュを通じた自然選択の適切な実例であることが示され、オオシモフリエダシャクの工業暗化の検証に関して科学的に正当な批判については解消された。ケトルウェルの実験について批判していた進化遺伝学者のジェリー・コイン(en:Jerry Coyne)もまた、この論文はかつてのコインの批判に答えており、この結論に同意すると述べている。
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