ポリオキソアニオンの構造と化学式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/06/05 11:16 UTC 版)
「オキソアニオン」の記事における「ポリオキソアニオンの構造と化学式」の解説
「ポリ酸」も参照 ポリオキソアニオンはオキソアニオンのポリマーで、いくつもの単量体オキソアニオンが MOn 多面体の辺と角を共有することでできる。多面体の2つの角が共有されると、ポリマーの構造は鎖状か環状になる。短い鎖を持つものの例としてポリリン酸イオンが挙げられる。輝石のようなイノケイ酸塩は、SiO4 四面体の長い鎖を持っている。メタバナジン酸アンモニウム NH4VO3 のようなメタバナジン酸イオンも同じ構造を持つ。 オキソアニオンの組成式、SiO32− は次のようにして得られる。ケイ素イオン (Si4+) は4つの酸化物イオン (O2-) と結合していて、2つの Si4+ で1つの O2- を共有している。よって両原子の量的関係とその電荷は次のように求まる。 量的関係: Si + 4 O − 2 × 1 2 O = SiO 3 {\displaystyle {\ce {Si\ +4O-2\times 1/2O=SiO3}}} 電荷: + 4 + ( 4 × − 2 ) − ( 2 × ( 1 2 × & − 2 ) ) = − 2 {\displaystyle {\ce {+4+(4\times -2)-(2\times (1/2\times \And -2))=-2}}} 環は2つの末端が結合した鎖と見なさる。環状三リン酸 P3O93- はその例である。 1つの四面体につき3つの角が他と共有されると、構造は平面的に拡張される。たとえば角閃石の内部(たとえばアスベスト)において、2つの鎖が1つおきに角を共有することにより、寄りそっている。その結果、組成式は [Si4O11]6− となる。直鎖構造はこれらの鉱物が繊維のような性質を持つことを説明できる。全ての四面体が3つの角を他と共有すると、雲母 [Si2O5]2- のような平面構造になる。つまりケイ素に結合している4つの酸素のうち、3つは他とのケイ素とも結合している。 全ての四面体につき4つの角が共有がされると、石英のように構造は3次元的になる。アルミノケイ酸塩は一部のケイ素がアルミニウムに置き換わった鉱物である。しかし、アルミニウムの酸化数はケイ素より1つ小さいので、置換には他のカチオンの追加を伴う。そのような構造の可能な組み合わせの数はとても大きい。これはアルミノケイ酸塩の種類が多いことの理由の一つである。 MO6 の八面体ユニットは遷移金属のオキソアニオンでよく見られる。鎖状ポリマーイオン Mo2O72- の塩など、いくつかの化合物は四面体ユニットと八面体ユニットの両方を持つ。八面体の角だけでなく辺が共有されることがある。このとき橋渡しをしている酸素原子の歪みを減らすために、八面体は歪められることが多い。この結果ポリ酸と呼ばれる三次元構造ができあがる。典型的な例はリンモリブデン酸イオンのケギン構造(英語版)である。辺の共有は電荷密度の減少に貢献する。たとえば2つの八面体の間で縮合反応が起こるとするとき、次のような反応式になる。 2 MO 6 n − + 4 H + ⟶ M 2 O 10 ( n − 4 ) − + 2 H 2 O {\displaystyle {\ce {2MO6{}^{{\mathit {n}}-}\ +4H^{+}\ ->M2O10{}^{({\mathit {n}}-4)}^{-}\ +2H2O}}} 7 MoO 4 2 − + 8 H + ↽ − − ⇀ Mo 7 O 24 6 − + 4 H 2 O {\displaystyle {\ce {7MoO4^{2-}\ +8H^{+}<=>Mo7O24{}^{6-}\ +4H2O}}} 四面体モリブデン酸イオンは7つの角を共有するクラスターへ変わり、モリブデンの平均電荷は6/7となる。ヘプタモリブデン酸イオンのクラスターは非常に安定であるので、2つから6つのモリブデン酸イオンクラスターは、たとえそれが中間体として生成したとしても、検出されない。
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