オキソアニオンとは? わかりやすく解説

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オキソアニオン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/06/05 11:16 UTC 版)

オキソアニオン (: oxoanion) またはオキシアニオン (: oxyanion) は化学式 AxOyz-(Aはある元素を指し、Oは酸素原子を指す)で表される化合物である。多くの元素がオキソアニオンを作ることができる[1]。単純なオキソアニオンの構造式はオクテット則により予想できる。縮合されたオキソアニオンの構造は AOn として、互いに辺や頂点を共有している多面体を単位にしてまとめられる。リン酸またはポリリン酸エステルである AMPADPATP は生物学において重要である。

単量体オキソアニオン

単量体オキソアニオンの化学式 +3 亜塩素酸イオン +5 塩素酸イオン +7 過塩素酸イオン

第3周期以降の元素では配位数6が取れるようになるが、単独の八面体形オキソアニオンはあまりに高い電荷を持つため、知られていない。つまり、モリブデン(VI)は MoO66- を作ることはないが、四面体型のモリブデン酸イオン MoO42- は作ることができる。縮合されたモリブデン酸イオンからは MoO6 のユニットが見つかる。完全にプロトン化された八面体型オキソアニオンは、Sn(OH)62- や Sb(OH)6- などの化学種から見つかる。

縮合反応

二クロム酸イオン; 二つの四面体が一つの角を共有している。

水溶液において、大きな電荷を持つオキソアニオン同士の縮合反応が起こりうる。二クロム酸イオン Cr2O72- の生成はその例で、

AMP ADP ATP

ATP と ADP の変換は加水分解反応であり、生体系の重要なエネルギー源となる。

ケイ酸塩の生成は二酸化ケイ素Lux-Floodの定義英語版での酸として働く、酸塩基反応である。

メタバナジン酸アンモニウム内のメタバナジン酸イオン鎖
シクロトリリン酸

ポリオキソアニオンはオキソアニオンのポリマーで、いくつもの単量体オキソアニオンが MOn 多面体の辺と角を共有することでできる[2]。多面体の2つの角が共有されると、ポリマーの構造は鎖状か環状になる。短い鎖を持つものの例としてポリリン酸イオンが挙げられる。輝石のようなイノケイ酸塩は、SiO4 四面体の長い鎖を持っている。メタバナジン酸アンモニウム NH4VO3 のようなメタバナジン酸イオンも同じ構造を持つ。

オキソアニオンの組成式、SiO32− は次のようにして得られる。ケイ素イオン (Si4+) は4つの酸化物イオン (O2-) と結合していて、2つの Si4+ で1つの O2- を共有している。よって両原子の量的関係とその電荷は次のように求まる。

量的関係:
デカバナジン酸イオン、V10O284-

MO6 の八面体ユニットは遷移金属のオキソアニオンでよく見られる。鎖状ポリマーイオン Mo2O72- の塩など、いくつかの化合物は四面体ユニットと八面体ユニットの両方を持つ[3][4]。八面体の角だけでなく辺が共有されることがある。このとき橋渡しをしている酸素原子の歪みを減らすために、八面体は歪められることが多い。この結果ポリ酸と呼ばれる三次元構造ができあがる。典型的な例はリンモリブデン酸イオンのケギン構造英語版である。辺の共有は電荷密度の減少に貢献する。たとえば2つの八面体の間で縮合反応が起こるとするとき、次のような反応式になる。

HPO32-
硫酸分子
クロム酸イオンの Predominance diagram

上で言及したとおり、縮合反応は酸塩基反応でもある。多くの系では、プロトン化と縮合反応の両方が起こりうる。クロム酸イオンの例は比較的単純なものである。クロム酸イオンの 優勢ダイアグラム英語版 において、pCr はクロムの濃度の負の対数を表す。ここで、二つの平衡が存在する。平衡定数は次のように定まる[7]

log K1 = 5.89
log K2 = 2.05

Predominance diagram は次のように解釈される。

  • クロム酸イオン CrO42- は高い pH 領域で優位な化学種である。これはpH 6.75以上の溶液でのみ存在する。
  • pH < pK1 であるとき、クロム酸水素イオン HCrO4- が希釈溶液で優位になる。
  • 二クロム酸イオン Cr2O72- が高濃度溶液で優位になる。ただし pH が高い場合を除く。

H2CrO4 や HCr2O7- といった化学種は非常に低いpHの下でのみ生成するので、表の外である。

バナジン酸塩モリブデン酸塩タングステン酸塩など場合は、ポリ酸が関わってくるので Predominance diagram は非常に複雑になる[8]。高度なポリマーになると生成速度が極端に遅くなるのも、事を複雑にしている。数か月待っても平衡状態に達さないことがあり、この場合は平衡定数や Predominance diagram が正確に求められない。

出典

  1. ^ Greenwood, Norman N.; Earnshaw, Alan. (1997), Chemistry of the Elements (2 ed.), Oxford: Butterworth-Heinemann, ISBN 0080379419 
  2. ^ Mueller, U. (1993). Inorganic Structural Chemistry. Wiley. ISBN 0471937177. 
  3. ^ Lindqvist, I.; Hassel, O.; Webb, M.; Rottenberg, Max (1950). “Crystal Structure Studies on Anhydrous Sodium Molybdates and Tungstates”. Acta Chem. Scand. 4: 1066-1074. doi:10.3891/acta.chem.scand.04-1066. 
  4. ^ a b Wells, A.F. (1962). Structural Inorganic Chemistry (3rd ed.). Oxford: Clarendon Press.  p446
  5. ^ Lindqvist, I. (1950). Arkiv Kemi 2: 325. 
  6. ^ da Costa, C.P.; Sigel, H. (2000). “Lead(II)-Binding Properties of the 5‘-Monophosphates of Adenosine (AMP2-), Inosine (IMP2-), and Guanosine (GMP2-) in Aqueous Solution. Evidence for Nucleobase−Lead(II) Interactions”. Inorg. Chem. 39 (26): 5985-5993. doi:10.1021/ic0007207. PMID 11151499. 
  7. ^ Brito, F.; Ascanioa, J.; Mateoa, S.; Hernándeza, C.; Araujoa, L.; Gili, P.; Martín-Zarzab, P.; Domínguez, S.; Mederos, A. (1997). “Equilibria of chromate(VI) species in acid medium and ab initio studies of these species”. Polyhedron 16 (21): 3835-3846. doi:10.1016/S0277-5387(97)00128-9. 
  8. ^ Pope, M.T. (1983). Heteropoly and Isopoly Oxometalates. Springer. ISBN 0387118896. 



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