ボーイング_X-51とは? わかりやすく解説

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X-51 (航空機)

(ボーイング_X-51 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/05 15:04 UTC 版)

X-51 ウェーブライダー

飛行中のX-51Aのアーティストのコンセプト

X-51スクラムジェットエンジンに関する無人試験機である[1]Xプレーンの1つで、通常のターボジェットエンジンでは機能しなくなる極超音速領域において、スクラムジェットエンジンの試験を行う。研究・実験・開発はアメリカ空軍、米ボーイング社、米プラット・アンド・ホイットニー・ロケットダイン社、DARPANASAによって行われた。その飛行形態からウェーブライダー[2]という愛称もある。

概要

B-52の翼下に搭載されたX-51Aの試験機

2003年に研究を開始し、2005年にX-51と名づけられる。2006年にはアメリカ航空宇宙局ラングレー研究所でエンジンの地上燃焼試験を行う。順序としてはX-43の次となるが、X-43との相違点としては、スクラムジェットの燃料(液体水素→ジェット燃料)、ロケットブースター部の流用元(ペガサスロケットMGM-140 ATACMS)などが異なる。機体は、NB-52Hによって高度35,000フィート(10,700メートル)まで運ばれ、そこから投下される。投下直後はATACMSから流用したロケットブースターでマッハ4.5まで加速し、その後スクラムジェットエンジンでマッハ6から7となる。このエンジンの燃料は、炭化水素系のジェット燃料ではあるが、引火点が高くなるように合成されたJP-7である。機体は、無人機であるため小型であり、胴体後部がブースター部である。機体中央部(本体後部)に4枚、尾部(ブースター部端)に6枚の小型翼を持つ。インテイクは機体下面にある。機体にはXB-70で用いられたコンプレッション・リフトという設計思想を取り込んでいる。

スクラムジェットはConventional Strike Missile構想の背景技術のひとつとも考えられている。

試験飛行

テスト機として4機のX-51Aが製作され、これらを使う飛行試験が計画・実施された。

当初2009年に予定された初飛行は[3]、延期されて2010年5月26日に実施された。エドワーズ空軍基地を離陸したNB-52Hより高度約15,000メートルで切り離され、ロケットブースターによる上昇加速後にスクラムジェットエンジンを140秒燃焼してマッハ4.88までの加速を行い(トラブルにより早期に燃焼が停止したため、部分的な成功に留まった)、高度約21,000メートルに達した[4]

2011年6月13日に2回目の飛行試験が実施されたが、ブースターの加速終了後にスクラムジェットが正常動作せず、テストは失敗した[5]

2012年8月14日にカリフォルニア州で行われた3回目の試験飛行において、制御翼の1つが正常動作せず、テストは失敗した。[6]午前11時36分頃(現地時間)、米海軍ポイントマグー射場の訓練海域上空で母機のB-52から分離された後、正常にロケットブースターに点火された。分離の約15秒後にロケットブースターが切り離されたが、その約16秒後に制御翼の1つが不具合を起こして機体が制御不能となり、極超音速飛行用のスクラムジェットエンジンに点火されないまま、太平洋に墜落した。計画では5分間にわたってマッハ6の速度を出すはずだった。この時点では、X-51Aは1機が残っていた[7][8][9]

2013年5月1日に、X-51は4回目で最後の飛行試験が行われ、マッハ5に到達し、試験は完全に成功した[10]。B-52Hから切り離されたX-51は、ブースターロケットによってマッハ4.8まで加速、その後ブースターからスムーズに分離され、独自のエンジンに点火した。試験機はマッハ5.1まで加速し、210秒間飛行した後に燃料切れになりマグー岬沖の太平洋に突入し、総飛行時間は6分を超えた。この試験は、最長のエアブリージング極超音速飛行で、研究者達は、飛行中の370秒間の遠隔測定データを収集した[11][12][13]。米国空軍研究所は、成功した飛行は、ミサイル、偵察、輸送、宇宙システムのエアブリージングの第1段階など、極超音速飛行の実用化のための研究に役立つと考えている[14]

仕様

X-51Aの構想図 (US AFRL)

出典: X-51 Scramjet Engine Demonstrator - WaveRider (SED-WR)

諸元

  • 乗員: なし
  • 定員: なし
  • 全長: 7.9 m (26 ft)
  • 全高:
  • 翼幅:
  • 空虚重量: 1,814 kg (4,000 lb)
  • 動力: Pratt & Whitney Rocketdyne SJX61 SJY61 ラムジェット/スクラムジェットエンジン、 × 1

性能

  • 最大速度: 6,200 km/h (3,900 mph) マッハ 7+
  • 航続距離: 740 km (460 miles)
  • 実用上昇限度: 21,300 m (70,000 ft)


使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。

関連項目

脚注

  1. ^ USAF. “X-51A Waverider (USAF Fact Sheets)”. 2017年2月28日閲覧。
  2. ^ 「ウェーブライダー」という語自体は一般名詞である。曖昧さ回避項目のウェイブライダーも参照。
  3. ^ エドワーズ空軍基地プレスリリース 2010年3月4日
  4. ^ X51Aウェーブライダー、初飛行でマッハ5を達成”. sorae.jp (2010年5月27日). 2011年7月7日閲覧。
  5. ^ Second X-51 hypersonic flight ends prematurely, brings new flight test data”. defenceweb.co.za (2011年6月17日). 2011年7月7日閲覧。
  6. ^ 米空軍の超音速機、発進直後に破壊 マッハ6到達せず”. CNN (2012年8月16日). 2012年8月16日閲覧。
  7. ^ X-51A flight ends prematurely”. Wright-Patterson Air Force Base (2012年8月15日). 2012年8月20日閲覧。
  8. ^ Air Force X-51A WaveRider Hypersonic Jet Crashes”. ABC News Network (2012年8月15日). 2012年8月20日閲覧。
  9. ^ “米空軍の極超音速機X51A、試験飛行に失敗”. AFPBB News. (2012年8月16日). https://www.afpbb.com/articles/-/2895307?pid=9365071 
  10. ^ “X-51A Waverider Achieves Hypersonic Goal On Final Flight”. aviationweek.com. (2013年5月2日). http://www.aviationweek.com/Article.aspx?id=/article-xml/awx_05_02_2013_p0-575769.xml 2013年5月3日閲覧。 
  11. ^ "Boeing X-51A WaveRider Sets Record with Successful 4th Flight" Archived March 4, 2016, at the Wayback Machine.. Boeing, 3 May 2013.
  12. ^ "Hypersonic X-51 programme ends in success" Archived October 11, 2016, at the Wayback Machine.. Flight International, 3 May 2013.
  13. ^ "X-51A Waverider Achieves Hypersonic Goal On Final Flight" Archived April 12, 2016, at the Wayback Machine.. Aviation Week, 2 May 2013.
  14. ^ "High-Speed Strike Weapon To Build On X-51 Flight" Archived January 4, 2014, at the Wayback Machine.. Aviation Week, 20 May 2013.

外部リンク


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