ホモエロティシズムの可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 14:30 UTC 版)
「ティテュオスの罰 (ミケランジェロ)」の記事における「ホモエロティシズムの可能性」の解説
ミケランジェロがカヴァリエーリのために描いた一連の絵画は、完成品であった。ミケランジェロが最初の作品群を渡したのは1532年のことであり、この中には含まれている、ティティオスとガニュメデスの絵について学者たちは、ホモエロティシズム(Homoeroticism)のニュアンスがあると解釈している。例えば、神話におけるティティオスは、アポロンの母レトをレイプしようとした。これによる罰として、ティテュオスは二羽のハゲタカがその肝臓を永久につつくことのできるように、黄泉の国(Hades、特定の神を意味するハデスとは異なる)の岩に鎖でつながれることとなった。このことから、この絵は、決して叶うことのない恋慕や愛を表現したものとして解釈することができるという。また、肝臓は「情欲の座」とも呼ばれることから、ミケランジェロのカヴァリエーリに対する片思いの情景とも考えられる。 ガニュメデスの絵についても、同様のホモエロティシズムの解釈を行うことができる。まず神話において、ガニュメデスはゼウスの酌人(Cupbearer)であった。ゼウスはこの若い酌人に強い欲を抱き、鷲の姿になってオリンポス山に連れ出した。この文脈では、ガニュメデスは若いカヴァリエリを、鷲は成熟した圧倒的なミケランジェロを表しているのではないだろうかとされており、このシーンは、ミケランジェロのカヴァリエリに対する肉体的な欲望を視覚的に表現したものであるのかもしれないという。 同性愛に付随する社会的な烙印のためにミケランジェロがこのような絵やソネット、手紙を使って自分の愛情を告白するのは、理に適っているということができるという。たとえフィレンツェに広範な同性愛者のコミュニティがあったといえど、ミケランジェロの信仰は、若い貴族に対する自分の気持ちをオープンにすることを許さなかったのだ。また、ミケランジェロは他の青年と関係を持っていることで何度も指摘されていた。一連のホモエロティシズミックな絵は、ミケランジェロにとって、人目を避け、そしてゴシップを避けて自分の気持ちを表現する手段だった可能性がある。
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