ヒューゴの中で
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/13 05:11 UTC 版)
「1989年アメリカ海洋大気庁P-3エンジン喪失事故」の記事における「ヒューゴの中で」の解説
ヒューゴの「目」に到達すると、パイロットは即時に、3番エンジンの喪失と、4番エンジン(右外側)に長さ2メートルほどの布のようなものがあることを報告した。NOAA42はまだ右に傾いており、ヒューゴの中心へではなく右へ向かって飛んでいた。パイロットは左旋回を行い、危険な雷雲のそばを進んだ。NOAA42はハリケーンの目の中を一周しながら、次第に高度を上げていた。 この時、管制官が客室内の状況を訪ねた。重傷を負ったものはいないものの、機材や物が床のあちこちに転がる惨状であった。また、NOAA42は非常に重く、2つのエンジンのみで高度を上げてヒューゴから脱出することはできなかった。クルーは残りのエンジンが正常に作動するかの確認を行い、NOAA43からの無線に応対した。 (NOAA42)―― デイブ、私たちは今話すことができない。私たちは深刻な緊急事態に陥っています。NOAA42はエンジンをひとつ失い、残り3つのエンジンしかありません。今は燃料を排出する準備をしています。 NOAA43は、NOAA42の救助のため目へ向かいつつ、ヒューゴに近い軍事偵察機C-130に報告する、と答えた。 (NOAA42)――デイブ、ありがとうございます。これから燃料を排出するので、15分後まではこれが最後の会話です。完了したら報告します。私たちの状況についてマイアミに知らせてください。42、通話終了。 4番エンジンの温度センサーは高温を示しており、クルーは高度を上げるために、航空機の重量を減らすことを決めた。NOAA42は22,769キログラムの燃料を搭載しており、そのうち6803キログラムの排出を決定した。一方、燃料を排出する際に火花によって点火することを防ぐため、22台の水温計付き自立プローブ(およそ300キログラム)を脱落させた。客室内の全機器の電源を落とし、必要な分の燃料のみを残して放出が完了したところでクルーが再びナビゲーション装置の電源を入れると、すぐに偵察機C-130からの連絡があった。(コールサインはTEAL57であった) TEAL57のクルーはNOAA42に起きた事態を知っており、西およそ3キロメートルの地点からヒューゴへ突入すると伝えた。それに対しNOAA42は、「目」に入った後に下降して、NOAA42の4番エンジンに損傷がないか点検してほしいと答えた。 5分後、TEAL57はハリケーンの目に入ったことを報告し、NOAA42の行方を尋ねた。カテゴリー5のハリケーンの中心で操縦しながら、両機は約300メートルの距離まで近づいて通信を行った。 (TEAL57)――NOAA42、我々は、4番エンジンを含めてあなたの機体上部をはっきりと見ることができます。吹き飛ばされた氷結防止ブーツが第4エンジンにぶら下がっているらしいこと以外に損傷はありません。望むならば、我々は機体下部を検査します。 (NOAA42)――お願いします。 数分後、TEAL57は結果を報告した。 (TEAL57)――NOAA 42、損傷はありません。脱出は東側の雲の壁からを考えています。これから、NOAA42が脱出可能か調査を開始します。安全なルートが見つかるまで努力します。 (NOAA42)――了解、TEAL57、ありがとうございました。
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