ド・バンジュ式緊塞方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 09:18 UTC 版)
「シャルル・ラゴン・ド・バンジュ」の記事における「ド・バンジュ式緊塞方式」の解説
19世紀中盤から後装式の大砲を開発する多くの試みがなされてきたが、その閉鎖機構は部分的な成功と言える程度のものであった。発砲の際に、装薬の燃焼による高温のガスが漏れ出すことにより、パワーロスが生じるだけでなく、砲手が焼かれてしまう可能性もあった。小型のライフル銃では、ゴムまたは他の素材によるOリングを用いることができたが、大型の大砲では適切なシステムは容易に実現出来なかった。発砲の際の熱と圧力に耐えうる素材はいくつかあったが、ゴムのように自然に伸びるものはなく、従って強固な密閉ができなかった。 1872年、ド・バンジュは新たな大砲用閉鎖機構である、ド・バンジュ式緊塞方式を設計した。この設計では尾栓ブロックは3つの部品から構成されていた;後部の隔螺式(ネジ溝が一部にのみ彫ってある)のロック機構、尾栓を密閉するためのグリースを染みこませたドーナッツ型のアスベストパッド(緊塞環)、及びその前方の円形の可動式「ノーズコーン(遊頭)」である。発砲時にガス圧を受けてノーズは後退しアスベストパッドを圧迫するが、このときアスベストパッドは外側に広がるため、尾栓を密閉できる 。フランスでは、このノーズコーンをその形状から「きのこ型」と呼んだ。 操作は、通常尾栓の右側についているハンドルレバーで行う。レバーを引き上げ、尾栓を反時計回りにネジ溝がない場所まで回転させて、ロックを解除する。尾栓全体をリング型のホルダーに沿って後部にスライドさせる。尾栓ホルダーは片側(通常は左側)にヒンジがついており、引き出した尾栓を横に開くことにより、砲弾の装填が可能になる。 ド・バンジュ式緊塞方式はアメリカ海軍やイギリス海軍を含む、多くの軍で採用された。ド・バンジュが発明した方式は、現在でもなお使用されている。原型であるド・バンジュ式緊塞方式からの現在までの唯一の大きな進歩は、階段断隔螺式尾栓であるウェリン型尾栓(Welin breech block)の導入であり、これにより尾栓の耐力面積が増え、尾栓自体を小型化することができた。他の閉塞機構も使用されているが、ド・バンジュ式はそれらにも広く使用されている。
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