トヨタグループとの関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 01:54 UTC 版)
「ルネサスエレクトロニクス」の記事における「トヨタグループとの関係」の解説
日本だけでなく世界中の自動車メーカーにルネサスの製品が使われているが、特にトヨタグループと強い関係がある。産業ピラミッドの頂点であるトヨタ自動車とそのティア1(1次下請け)であるデンソーがルネサスの株主であり、ルネサスはティア2(2次下請け)かティア3(3次下請け)として、車載マイコン世界一位にも関わらず長らく弱い立場にあった。 一方で、トヨタもルネサスに依存しており、ルネサスからのマイコンの供給が滞るとトヨタの工場も停止する。この理由として、トヨタは在庫を持たない「ジャストインタイム」方式を取っている、またティア1でサプライヤーを分散させてもティア2・ティア3がほぼ同じサプライヤーから調達している「たる型」の下請け構造となっている、コストの問題から「分散生産」をせずにパーツを特定の工場で製造している、などが挙げられている。トヨタは特定のサプライヤー(デンソーとアイシン精機)への依存を避けるため、2000年代以降に下請けを分散させる方針を取っていたが、2011年の東日本大震災で那珂工場が被災した際、ほぼすべてのサプライヤーが2次下請けであるルネサスの那珂工場からECUを調達していたことが判明し、問題となった。これは2016年時点でも解消されておらず、2016年に熊本地震で川尻工場が被災したために再びトヨタの工場が休止した。ただし、海外でも「Kanban」として知られるトヨタ生産方式は世界の自動車業界の標準であり、ルネサスと日本の自動車業界だけが特殊というわけではない。2020年から2021年にかけてのコロナ禍における半導体不足の状況下で、2021年2月にNXPとインフィニオンのオースティン工場がテキサス寒波による停電で停止し、同年3月にルネサス那珂工場が火災で停止した際は、世界のほぼ全ての自動車工場が稼働を停止した。 なお、ルネサスの工場が停止するとトヨタや他の自動車メーカーのみならず日本国の経済にも影響を与えるため、ルネサスの工場が停止した際は自動車メーカーからも数千人規模の支援が入り、2011年の東日本大震災で壁が倒壊するなど甚大な被害を受けた那珂工場は3か月で、2016年に熊本地震で機材が損壊した川尻工場は1週間で復旧した。2021年2月の福島県沖地震で停止し、同年3月に火災で再び停止した那珂工場の復旧には経済産業省からも支援が入り、24時間体制で復旧に当たったことにより、火災で真っ黒になったクリーンルームが1か月で復旧した。2021年に那珂工場が出火した後の復旧に関する日経の調査によると、ルネサスが本社を構える東京都江東区から那珂工場に派遣された応援よりも、愛知県豊田市(トヨタ)、神奈川県厚木市(日産)、大阪府池田市(ダイハツ)から派遣された応援の方が多く、特に愛知県からは圧倒的な人員が投入された。これがそのまま2021年時点のルネサスの、自動車メーカー各社のサプライチェーン(供給網)への影響力の甚大さを表しているとしている。
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