テンソルの応用と重要性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/16 17:22 UTC 版)
テンソルは、物理学や工学において重要な位置を占めている。例えば、拡散テンソル画像では、さまざまな方向への臓器の水に対する微分透過率を表すテンソル量を用いて、脳の走査像が構成される。おそらく工学でテンソルが最も活用されているのは応力テンソルとひずみテンソルだろう。これらは2階のテンソルで、4階のテンソルである弾性率テンソルによって一般の線型的な素材に関連づけられている。 とくに3次元の物体中の応力を表す2階のテンソルは3次の正方行列によって成分を表示することができる。物体の中の立方体状の無限小体積要素について3方向の面それぞれ(向かい合う面どうしは十分近いので同一視される)に一定の力がかかっていて、力は3つの方向の要素を持っている。したがって3×3、つまり9個の成分によってこの立方体状無限小体積要素(最終的には点と見なされる)における応力が記述される。物体の境界内にはこの応力が(場所によって異なった値をとりながら)分布しており2階のテンソル(場)が考えられることになる。 テンソルは多次元の配列によって成分表示できるのは確かだが、テンソルの理論を構築することの意義はここの量がテンソルであるということによって具体的に添字づけられた成分を指定しないでも何が導かれるのかを説明することである。とくに座標変換によってテンソル(場)は決まったふるまいを見せる。 d次元空間に二種類の座標系 ( x i ) i , ( x i ′ ) i {\displaystyle (x_{i})_{i},(x'_{i})_{i}} が与えられていて、それら間の関係が直交行列 A = ( a i j ) {\displaystyle A=(a_{ij})} をもちいて x i ′ = ∑ j = 1 d a i j x j {\displaystyle x'_{i}=\sum _{j=1}^{d}a_{ij}x_{j}} と表されるとする。このとき2階の共変テンソルTが ( x i ) i {\displaystyle (x_{i})_{i}} 座標系では ( t i j ) i j {\displaystyle (t_{ij})_{ij}} と表示され、 ( x i ′ ) i {\displaystyle (x'_{i})_{i}} 座標系では ( t i j ′ ) i j {\displaystyle (t'_{ij})_{ij}} と表示されているとすれば、これらの間に変換則 t p q ′ = ∑ k , l = 1 d a p k a q l t k l {\displaystyle t'_{pq}=\sum _{k,l=1}^{d}a_{pk}a_{ql}t_{kl}} が成立している。 抽象的なテンソルの理論は今では多重線型代数と呼ばれる線型代数の一分野になっている。
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