チューニングによる圧縮比変更
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 04:23 UTC 版)
「圧縮比」の記事における「チューニングによる圧縮比変更」の解説
エンジンのチューニングにより圧縮比が変わるのは、大まかに以下のような場合である。 ピストン変更 - ピストンヘッドの切削・交換。 大幅なボアアップ。 燃焼室の加工 - 肉盛り(高圧縮比)・切削(低圧縮比)。シリンダーヘッドの面研。 ヘッドガスケットの変更 - ガスケットの厚みを変更する。薄いと高圧縮比、厚いと低圧縮比。 チューニングをする際には、現状の圧縮比を知る必要がある。圧縮比がなければ、エンジンの性能と耐久性を確保できないからである。たとえば、高圧縮比のエンジンでは、ピストンヘッドや燃焼室内壁、ポペットバルブにすすが堆積し、次第に内燃室最小容積が減少、圧縮比が自然増大する傾向を示す。そのため耐久性を重視したチューンの際には圧縮比を過剰に上げすぎないようにする。レーシングエンジンには極端に高圧縮比のものが存在するが、それらはレースごとのオーバーホールによって性能を保っている。 市販状態から圧縮比を変更する際は、エンジンのスペック諸元を入手すれば現在の総排気量と圧縮比、ボア・ストロークを知ることができる。例えば総排気量105 cc、圧縮比 9.5 : 1 の単気筒エンジンの場合には、圧縮上死点の際の内燃室最小容積は約11 ccと推定出来る。チューン済みのエンジンでは、バルブを閉じた状態で燃焼室に灯油などを満たしてその容量を量ることで、燃焼室容積を算出できる。変更後は改めて、液体を用いて圧縮比を得る。 旧車のチューンにおいては、純正品の入手困難により他エンジンのピストン流用が行われるが、その際の圧縮比変化量が作業前に分からないので、組み付け後の測定とそれに応じたピストン再加工が繰り返し必要になる。 OHCエンジンでガスケット変更やシリンダーヘッド面研による圧縮比変更を行った場合は、その変更した厚さに応じてストロークが変化するため、バルブタイミングや点火時期も厚さが変化した分ズレが生じる。このようなガスケット組み付けや面研作業後には、カムスプロケットの調整によるバルブタイミングの変更や、ディストリビューターやカムポジションセンサーの調整による点火時期変更を適切に行わなければ、本来の性能を発揮できなくなり、変更前より性能が低下する場合がありうる。 なお、圧縮比を調整する手法としては他にも複数枚のガスケットと標準の指定よりネジ部の長いプラグを組み合わせる手法も存在するが、点火位置がズレることに伴い点火時期にもズレが生ずるうえ失敗した場合プラグとピストンの接触も起こりうる。
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