ダラプリム価格高騰問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/10 07:31 UTC 版)
「マーティン・シュクレリ」の記事における「ダラプリム価格高騰問題」の解説
2015年8月10日、シュクレリのビジネス・プランに従って、チューリングはインパックス・ラボラトリーズから1953年にアメリカ食品医薬品局に承認されたダラプリム(ピリメタリン)の販売権を5,500万ドルで買収した。2015年後期現在、最もよく使用されるのは抗マラリア剤および抗寄生虫薬として、ならびに、フォリン酸やスルファジアジンとの併用により トキソプラズマ症(AIDSとの関連性の有無に関わらず)の治療にも用いられている。 ダラプリムの特許は切れていたが、ジェネリックはなかった。チューリングとインパックスの契約には、インパックスが卸や薬局からダラプリムを撤退させることが含まれており、そのため発表の2か月前の2015年6月にはインパックスは出荷を制限していた。競合相手が限られたマーケットにおける価格設定戦略に従って、チューリングは出荷量の制限を続けた。『ニューヨーク・タイムズ』紙は「この契約は事実上チューリングが薬の価格を上げるために計画されたとしか考えられない」と記した。 2015年9月17日、医療専門家のための綿密な医療情報を掲載するウエブサイト『Healio 』のデイヴ・ムアイオは、米国感染症協会およびHIV医学協会からチューリングの重役に宛て、ダラプリムの新価格について問う書簡があったことを報じた。米国市場での価格が一晩で1錠13.5ドルから750ドルと56倍になったのである。 この値上げは米国感染症協会およびHIV医学協会、米国研究製薬工業協会、大統領選候補者ヒラリー・クリントン、バーニー・サンダース、ドナルド・トランプから次々と批判された。 続く組織的努力は、チューリングに9月までの料金に戻す要求をし、患者の必要とすることに関連する問題について伝えるため、医療専門家や患者に関連する160以上の組織から支持を集めた。2015年現在、31州およびワシントンD.C.、プエルトリコから164団体から支持を受けた。 批判の影響により、シュクレリが投資していたレコードレーベルのコレクト・レコードはシュクレリとのビジネスを終了すると発表した。 2015年9月、『ブルームバーグ・マーケット』誌のインタビューにおいてシュクレリは、価格が上がろうと、コーペイ(保険加入者の自己負担金)は低くなるため多くの患者はチューリングが増設したフリー・ドラッグ・プログラムにより費用負担なしで薬を手に入れることができると主張した。また「もし自転車1台分の金額でアストンマーティンを売っている会社があったとしたら、我々はその会社を買収してトヨタの金額で売ろうとするだろう。それが犯罪だとは思わない」と語った。数日後、シュクレリは「人々の怒りに応えて」具体的な金額は明らかにせずに値下げを計画していると発表した。しかし11月下旬、チューリングはこれとは逆に、値段を下げることはないと語った。 2015年9月、サンダースおよびアメリカ合衆国下院議員イライジャ・カミングスがチューリング社の財政と価格設定方法の詳細を要求し、チューリング社は法律事務所ブキャナン・インガーソル&ルーニーから医療法や薬品価格に詳しい4名のロビイストを雇った。さらにシュクレリは価格設定の説明のために広告代理店を雇った。 2015年10月22日、インプリミス・ファーマシューティカルズの最高経営責任者であるマーク・バウムはダラプリムの有効成分であるピリメタミンとフォリン酸を含む、より安価で有効な配合剤を1錠1ドルで発売すると発表した。この薬はエイズ患者によくみられるトキソプラズマ症の治療の標準治療薬として、スルファジアジンと共に使用されるよう意図されている。 バウムは「供給元が一つしかないジェネリック医薬品が — それも、ダラプリムのように長期にわたって使用が認可されてきたものが — 突然値上げされて入手できないほどになるのは、これが初めてではない。」と述べた。バウムは「医師や患者が新しく柔軟性のある薬を安価に手に入れられる」ようにするための法人向けプログラム、「インプリミス・ケアーズ」の一環として、ダラプリムの代替となる配合剤を提供することが可能だと発表した。インプリミス社は飲み薬100錠入り瓶を99ドルから販売している。 2015年11月23日、チューリング社はダラプリムの希望小売価格は下げないが、病院ごとに最大半額までの数量割引交渉を計画していると発表した。チューリング社は、ほとんどの患者が初期治療を受ける病院において価格を下げることほど希望小売価格を下げることは重要ではないとの声明を発表した。チューリング社は、ダラプリムを希望する患者は誰でも購入できると宣言した。 感染症専門家やトリートメント・アクション・グループのティム・ホーン、HIV医学協会のカルロス・デル・リオなどの患者支援者は、初期治療で数日治療した患者でもその後も数週間または数か月にわたり治療を受け続けねばならず、チューリングの行動は不十分だと語った。
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