タイルの損傷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/10 07:10 UTC 版)
アトランティスの熱防護タイルは、この飛行で異常な損傷を受けた。打上げ時の記録映像からは、打上げ85秒後に、右側のスペースシャトル固体燃料補助ロケットの尖端から脱離した物体が、オービタに衝突したことが判明した。STS-27の乗組員も、上昇中に何度か、フロントガラスから白い物体が見えたと証言している。乗組員は、シャトル・リモート・マニピュレータ・システムを用いて、衝突のあった右舷を点検したが、カメラの解像度と可動範囲が限られていたため、タイルの損傷の程度を把握することは不可能だった。 この問題は、秘密のミッションであったため、乗組員が画像を地上に送ることが禁じられていたことから、さらに状況が悪化した。乗組員は、速度の遅い暗号情報しか送ることを余儀なくされ、NASAの技術者も低質の画像しか得ることができなかったため、損傷は実際は「ただの光と影」であると考えられてしまった。彼らは乗組員に対し、損傷は過去のミッションと比べて重大なものには見えないと伝えた。 ある報告では、ミッションコントロールが事態に無頓着に見えることが乗組員を「激怒」させていたとしている。船長のギブソンは、損傷を見たときに彼自身「我々は死のうとしている」と考え、シャトルが大気圏再突入を生き残れるとは信じられなかった。もし計器がシャトルの崩壊を示したら、死ぬ数秒前に「彼らの分析について自分が何を考えたかをミッションコントロールに伝える」ことを計画していた。着陸した機体を見たNASAはその損傷の大きさに驚いた。700以上のタイルが損傷しており、1つのタイルは完全に失われていた。このタイルがLバンドアンテナ用のスチール製取り付けプレートの上に設置されていたことで、コロンビア号空中分解事故のような大事故に至る焼損が防がれた可能性がある。オービターの左舷には損傷はほとんどなかった。スペースシャトル計画の歴史の中で、STS-27のアトランティスは、地球に無事帰還した中で最も損傷の大きなオービターだった。 調査委員会は、アトランティスの熱防護システムの損傷の詳細な調査から、事故の原因の調査を始め、関連する部分も徹底的な調査を行った。徹底的なデータの吟味により「フォルト・ツリー」を作成し、いくつかのシナリオを構築した。調査によって得られたこれらの情報は、委員会による発見や勧告の基礎となった。
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