セーフガード手続きの概要
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/08 07:42 UTC 版)
「1974年通商法」の記事における「セーフガード手続きの概要」の解説
セーフガードの発動のための調査は、次の場合に開始される。 ① 業界団体、企業及び労働組合を含む産業を代表する者の申請 ② 大統領又は合衆国通商代表(USTR)の要請 ③ ITCの自らの発意。 ITCは、調査開始後120日(ITCが複雑な案件と決定した場合は150日)以内に輸入による国内産業への重大な損害又はそのおそれの存在についての決定を行う。 ITCが、国内産業への重大な損害又はそのおそれの存在について肯定的決定を行った場合、取るべき措置についての勧告も作成し、調査開始後180日以内に大統領へ報告する。なお、ITCは6名の委員で構成されているために、表決に当たって同数になることがある(委員長も委員として投票し、決裁権はない)。この場合、アンチダンピング手続きや相殺関税手続きでは、被害について肯定的決定となるが、セーフガード手続きでは、大統領はいずれの意見を採用することできる。 大統領は、ITCの肯定的決定を含む報告の受領後、原則的に60日以内に次のような措置を取ること(又は何らの措置も取らない)を決定する。 ① 関税の賦課、引上げ(従価50%の上乗せまで) ② 関税割当の実施 ③ 輸入割当の実施 ④ 外国との輸出制限協定の交渉 ⑤ 調整援助措置の実施 ⑥ これらの組合せ 措置を取り又は取らないことを決定した場合、大統領は議会へ報告する。措置を取らない場合又はITCの勧告と異なる決定をした場合、議会は90日以内に(この否認決議案の審議にはファスト・トラック手続きが適用され、90日以内に必ず採決が行われる。)合同決議(米国における法律の議決方式のひとつで、大統領は拒否権を行使でき、これを覆すには両院の各々3分の2の賛成が必要)により大統領の決定を覆すことができる。この場合30日以内にITC勧告どおり大統領は布告しなければならない。 この議会の関与は、制定当時は同時決議(両院の各々過半数の賛成で採択され、拒否権を行使することができない)で行われたが、このような一旦法律で行政府に与えた権限を大統領の拒否権を行使することのできないかたちで否認することは憲法違反であるとの最高裁の判決を受けて1984年通商貿易法により改正された。 これらの関税引上げ又は輸入制限措置は、最恵国待遇原則によらずに(即ち特定のみに対して)発動することができる(第204条⒠))。ただしこの場合は、米国の国際的義務につて考慮することが必要であるとされており、現在まで選択的適用をした事例はない。ただし国別の割当を決定するときに特定国のみ輸入実績を下回る(最大のシェアであったが)割当をしたことはある。(例えば大型オートバイに対する輸入救済における対日の割当の事案)
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