ストリーミングキャッシュとタグRAM
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/19 08:04 UTC 版)
「R8000」の記事における「ストリーミングキャッシュとタグRAM」の解説
ストリーミングキャッシュは外付けの1MBから16MBのキャッシュで、R8000の二次キャッシュ、R8010の一次データキャッシュとして機能する。R8000と同じクロック周波数で動作し、一般的な同期SRAM(SSRAM)で構成される。この方式はデータアクセスを頻繁に必要とする浮動小数点演算の性能を維持するために採用された。小容量で低レイテンシの一次キャッシュでは、十分にデータを供給できず、頻繁にキャッシュミスが発生する。そこでレイテンシは大きいがヒット率向上が望める二次キャッシュを一次キャッシュとし、レイテンシを考慮した設計にした。 ストリーミングキャッシュは2ウェイインターリーブ構造となっている。2つの独立したバンクに分かれていて、一方は奇数アドレスのデータ、もう一方は偶数アドレスのデータを格納する。そのため、2つのリード、2つのライト、1つのリードと1つのライトがそれぞれ別のバンクであれば同時に実行可能である。それぞれのバンクに64ビットの片方向バスが2つあり、一方はリード、もう一方はライトに使用する。これは双方向バスで必要となるバスの方向転換 (bus turnover) を不要にする設計である。方向転換が不要であるため、あるサイクルでリードを行い、次のサイクルでライトを行うことが可能で、間に方向転換のためのサイクルを挟む必要がなく、性能が向上する。 ストリーミングキャッシュのタグは2つのタグRAMチップにあり、それぞれ1つのバンクに対応している。両方のチップに同一のデータが含まれる。それぞれのタグRAMチップは1.189Mbitのキャッシュタグを持ち、4トランジスタのSRAMセルで構成している。このチップは0.7μmのBiCMOSプロセスで実装されており、2層のポリシリコン層と2層のアルミニウム配線層から成る。BiCMOS回路はデコーダ部で使われており、サイクルタイムを減らすためにセンスアンプとコンパレーターを統合している。タグRAMチップは14.8mm×14.8mmで、155ピンのCPGAパッケージであり、消費電力は75MHzで3Wである。タグRAMはキャッシュタグを分担するだけでなく、ストリーミングキャッシュを4ウェイ・セットアソシアティブ構成で動作させる機能も分担している。ピン数を減らすため、キャッシュタグ自体が4ウェイ・セットアソシアティブになっており、通常のセットアソシアティブ式のキャッシュとは異なり、ルックアップ後にロジックでアクセスするセットを選択している。 ストリーミングキャッシュへのアクセスはスループット向上のためにパイプライン化されている。このパイプラインは5段構成で、1段目でアドレスがタグRAMに送られ、2段目でそれにアクセスする。3段目でタグRAMからSSRAM群に信号が送られ、4段目でSSRAMにアクセスし、5段目でデータがR8000またはR8010に戻る。
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