シングル盤のリリース
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 16:22 UTC 版)
「胸いっぱいの愛を」の記事における「シングル盤のリリース」の解説
LP『レッド・ツェッペリン II』のリリース後、ラジオ局は、たちまち成功を収めたこのアルバムから、放送でかけるのに適したトラックをどれにしようかと考える中で、アルバム冒頭の衝撃的な曲である「胸いっぱいの愛を」は有力な候補だった。しかし、多くのラジオ局は、中間部の形式にはまらない部分が放送向きではないと判断し、曲を通して放送せず、自前で編集を加えた短縮版を作って放送に使っていた。アトランティック・レコードは、こうした状況にすぐさま反応し、米国での通常のシングル盤(B面は同じアルバムに収録された「Living Loving Maid (She's Just a Woman)」)とは別に、形式にはまらない部分を削除し、早めにフェードアウトで終了する3分10秒バージョンを、1969年11月7日に Atlantic #45-2690 としてリリースした。この短縮版は、ラジオ局を対象としたプロモーション用のリリースとして意図されていたはずであったが、一部は米国の一般市場にも出回ったようで、ファンにとってのコレクターズ・アイテムとなった。この曲は、米国のほか、フランス、西ドイツ(チャート首位)、スイス、オランダ、ベルギー、オーストラリア(EPでも発売)、日本でもシングル盤として発売されたが、これは、こうした国々においてバンド側がレコード会社に対して強い影響力を発揮できなかったからであった。短縮版は、やがて回収されることになった。 イギリスでは、アトランティック・レコードが自ら短縮版を発売しようと企画し、リリースを前提に1969年12月5日に最初のレコードをプレスした。しかし、バンドのマネージャーだったピーター・グラントは、イギリス市場については断固としてバンドの「シングルなし」というマーケティング戦略を通し、リリースを止めさせた。このとき出されたバンド自身の公式声明には、イギリスで最初に発売する新曲を準備していることが付け加えられていたが、これは結局実現しなかった。また、レコード会社側からの大きな圧力にもかかわらず、バンドが存続していた間、レッド・ツェッペリンはイギリスでは公式シングルをいっさいリリースしなかった。 数年後、アトランティック・レコードは「胸いっぱいの愛を」をオリジナルと同じ「Living Loving Maid」とのカップリングで、オールディーズ・シリーズ(Oldies Series)・レーベルから再発した(OS-13116)。このとき、ちょっとしたエラーがあった。この再発では、短縮された3分10秒バージョンが使用されたにもかかわらず、レーベルには演奏時間がオリジナル版の5分33秒で印刷されていたのである。 1997年、アトランティック・レコードは、1969年の録音から新たに作成された4分50秒の短縮版を、CDシングルとしてリリースした。かつてシングル盤が発売されないようバンド側が市場を管理していたイギリスにおいても、このバージョンはチャート入りを果たした。
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