シアン化合物の解毒剤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 05:41 UTC 版)
塩類の摂取による中毒は、シアン化水素ガスの吸入によるものに対し進行が遅く、救命できる可能性が高い。 まず医療機関に連絡する。シアンによる中毒であることを忘れずに伝える。救助者が患者の呼気を吸わないように対策を行ってから開始する。当然、マウストゥマウスの人工呼吸は厳禁。摂取量が少なく、患者に意識があるなら、吐かせて胃洗浄を繰り返す。 シアン化合物の解毒剤としては、亜硝酸化合物のうち亜硝酸アミルが気化しやすいことを利用して吸い込ませる方法が主にとられる。救急処置として亜硝酸アミルが選ばれるのは、医療資格を必要とする注射の必要がないからである。酸素吸入と亜硝酸アミルの吸入(15秒嗅がせ、15秒空気または酸素を吸入させる措置を、5回繰り返す)を行う(シアン化合物を扱う事業所では、小型酸素吸入器と亜硝酸アミルの試薬を用意しておくべきかもしれない)。解毒のメカニズムとしては、亜硝酸アミルがヘモグロビンのヘム鉄のFe2+を酸化させてFe3+のメトヘモグロビンとなり、さらにシアンがメトヘモグロビンのFe3+と配位結合しシアンメトヘモグロビンとなることによって、動物ミトコンドリアの酸化型のシトクロム酸化酵素複合体(COX)のFe3+へのシアンの配位結合を防いで無毒化される。さらに、シアンメトヘモグロビンから徐々に解離するシアンと別に投与したチオ硫酸ナトリウムが結合してチオシアン酸になる。 他に医療の分野ではシアン化物(青酸カリなど)中毒の解毒剤としてシアンを一旦メトヘモグロビンに結合させ徐々に解毒するために、チオ硫酸ナトリウム水溶液の連続静脈注射と亜硝酸化合物を併用する。この際、チオ硫酸ナトリウムはシアン化物をチオシアン化物へ変化させる。チオシアン酸も毒性を持つがシアンよりも弱い。亜硝酸塩は血液中のヘモグロビンと反応してメトヘモグロビンとなる。メトヘモグロビンはヘム鉄やチトクロームの鉄よりもシアンと強く結合するのでシアンの中毒症状の発現を遅らせる働きがある。
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