コースの定理
英語:Coase theorem
資源配分は、法的権利や法的義務などに関係なく、すべての状況で同じ配分であり続けるとする定理のこと。
コースの定理は、アメリカの経済学者でノーベル経済学賞を受賞したロナルド・コース(Ronald H. Coase)により発見された。
コースの定理では、農家と、農家に隣接する牧場において、牧場の牛が農家の穀物を荒らした場合を例に挙げている。このような状況下で、お互いが事業を継続する場合や、どちらか、あるいは両方が事業をやめる場合などの資源配分や、損害賠償が発生した場合の所得配分などを検証している。
例えば、お互いが事業を継続し、牧場主に損害賠償の責任が生じた場合を挙げると、資源配分は変わらないが所得配分は変わる。牧場主は農家へ賠償額を支払うことにより、牧場の収益が減少し、農家の収益は変わらない。一方、牧場主に損害賠償の責任が生じない場合、農家の収益は減少するが、牧場の収益は変わらない。これにより、損害賠償の有無に関係なく、社会的収益(農家と牧場の収益の合計額)は変わらないことがわかる。ちなみに、農家と牧場の所得配分は損害賠償の責任の有無により変わる。
コースの定理は、取引費用が存在しない前提で成立するものであり、取引費用が存在すると、資源配分はすべての状況で同じ配分でなくなる。
関連サイト:
The Problem of Social Cost - (英語)(PDF)
コースの定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/22 09:14 UTC 版)
企業の生産活動から発生した公害が周辺住民に被害を与えている状況を考える。このとき取引コストがないなどの理想的条件の下では企業と住民の交渉によって外部不経済による過剰生産を避けることができ、少なくとも社会全体としては同じ水準の社会的余剰が達成される。これをコースの定理という。 ただし、誰が環境についての権利を持つかによって負担の配分は異なる。住民に権利(所有権)がある場合は企業に課税して住民に補償を与える(ピグー税など)ことになるので費用負担者は企業であり、企業に権利がある場合は住民側から企業の減産に補償を与えることになるので費用負担者は住民である。また、住民と企業のどちらが権利を持つかによって、企業の環境対策へのインセンティブが変わってくることも重要である。住民に権利がある場合、企業には環境負荷を小さくする技術革新を行うことでピグー税の負担を小さくすることが出来るので、企業に権利がある場合よりも環境対策への投資のインセンティブが高まる。
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