グレートヒェンの事例(退行催眠時の真性異言)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 20:33 UTC 版)
「真性異言」の記事における「グレートヒェンの事例(退行催眠時の真性異言)」の解説
英語を母語とするアメリカ人女性ドローレス・ジェイ (Dolores Jay)が催眠状態にある時に登場した10代少女の人格で、母語話者とドイツ語で会話をすることができたという。ウェスト・バージニア州で生まれ育ったドローレスは、同州育ちでメソジスト牧師のキャロル・ジェイ(Carrol Jay)の妻。教区の信者の治療のために催眠を用いていたキャロルが妻に催眠をかけたところ、ドイツ語を話すグレートヒェン(Gretchen 。マルグレーテの愛称形)なる人格が出現した。スティーヴンソンは、グレートヒェンの話した内容を詳細に分析した結果、彼女が19世紀最後の四半世紀をドイツで送ったと考えるのに十分な証拠があるとした。グレートヒェンがドイツ語を話したセッションは19回に及んでいる。セッションの間、彼女は1度だけドイツ語の辞書を引いたが、それ以前に206語もの単語が自然に彼女の口から出てきていた、とスティーヴンソンは指摘した。 トマソンによる再調査によれば、欺瞞を示す証拠が認められた。実は、グレートヒェンはドイツ語で対話することができなかった。彼女の発言は相手の質問を抑揚を変えて繰り返すものが大半で、その他はほんの一二語程度の短い言葉のみであった。また、「ドイツ語の語彙はほんの僅かで、発音に難あり("German vocabulary is minute, and her pronunciation is spotty")」。語彙は120語程度で、十分な意思疎通ができるレベルである400〜800語にも遠く及ばない。しかも、憶えている語彙も、英語と同語源でよく似た形の単語ばかりであった。 例えば、「眠りの後には何がある?(Was gibt es nach dem Schlafen?)」という質問に対する彼女の回答は「Schlafen ... Bettzimmer.」であった。おそらく英語の「bedroom」にあたる言葉を言おうとして、構成要素のそれぞれに対応するドイツ語の Bett と Zimmer を組み合わせたのだろうが、ドイツ語で寝室は Schafzimmer であり、Bettzimmer は宿泊施設の客室を指す。ちなみに、スティーヴンソンはこの回答を「正解」としていた。 ドイツ北東部の都市エーベルスヴァルデについては、存在しない市長の名を挙げるなど、確かな事が一つも言えなかった。またマルティン・ルターや宗教的迫害についての彼女の発言には、スティーヴンソンでさえ疑いを持っていた。
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