クリスティー式サスペンション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 19:43 UTC 版)
「ジョン・W・クリスティー」の記事における「クリスティー式サスペンション」の解説
M1928から採用された新式の懸架装置である「クリスティー式サスペンション」は、大型の接地転輪の一つ一つを、二重構造の車体側面に収納したコイルスプリングで独立懸架させたものである。 ストロークが大きくとれるため、従来のボギー型のリーフスプリング式に比べ路外機動性に優れ、また最後部の接地転輪と起動輪がチェーンで接続されて駆動することで、履帯を外している際は路上での高速走行が可能な装輪装甲車となった。装軌走行中は操縦手の左右のブレーキレバーにより、また装輪走行中はステアリングハンドルを取り付け、先頭の接地転輪を左右に振ることで方向転換を行った。従って装軌走行中に片方の履帯が切断された場合は、左右で操行の手段が異なる状態となるため、まともに走行することができなくなる。 走行方式の切り替えは一見便利であったが、履帯を外してフェンダー上に載せ結束したり、それを下ろして再装着するのは手間がかかりすぎてむしろ不便であり、また起動輪と転輪の接続機構を必要とすることは兵器としての複雑化を招き不利であるとして、量産・実戦投入された戦車としてはソ連のBT-2、BT-5、BT-7で採用されたに止まり、続くT-34シリーズや英軍の巡航戦車では、起動輪と転輪の接続機構が廃止されているため、クリスティー式であっても装輪走行はできなくなっている。また、既に大戦前にソ連軍の他の戦車で採用されていたトーションバー式サスペンションの方が路外での機動性や乗り心地により優れていたとされる。 なお、上部支持転輪が無く大型接地転輪を持つ戦車を全てクリスティー式と誤解する人も多い。例えば上部支持転輪の無いT-43、T-44、T-54/55、T-62はクリスティー式ではなくトーションバー式であり、逆に上部支持転輪のある英軍のコメット巡航戦車はクリスティー式である。両者は車体側面のコイルスプリングを使っているか、床下のトーションバースプリングを使っているかで区別される。また近似の無限軌道を使用する足回りとしてホンダ・アクティHA5に設定されたハーフトラック仕様の「アクティ・クローラ」がある。後2軸4本を通常のタイヤに交換して高速走行も可能かつ標準車が車軸懸架であるところ独立懸架(スイングアクスル式サスペンション)に変更されるなどクリスティー式との共通・近似点が見られるが、こちらはリーフスプリングを使用したシステムとなっている。
※この「クリスティー式サスペンション」の解説は、「ジョン・W・クリスティー」の解説の一部です。
「クリスティー式サスペンション」を含む「ジョン・W・クリスティー」の記事については、「ジョン・W・クリスティー」の概要を参照ください。
- クリスティー式サスペンションのページへのリンク