ギニア軍とは? わかりやすく解説

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ギニア軍

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/08 12:02 UTC 版)

ギニア軍
Forces armées guinéennes
ギニア軍の紋章
創設 1958年
総人員
徴兵制度 9-12ヶ月[1]
現総人員 9,700名[1]
財政
予算 5億2100万米ドル(2024年)[1]
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ギニア軍(ギニアぐん、フランス語: Forces armées guinéennes)は、ギニア共和国国軍。ギニアがフランスから独立した1958年に創設された[2]

歴史

創設当初の人員は、主にフランス植民地軍に勤務していたギニア人で構成されていた[2]。ただし、セク・トゥーレ初代大統領は軍部を信用しておらず、一部の元フランス軍人にはギニア軍への参加を許さなかったほか、頻繁な上級将校の配置転換や、軍とは独立した民兵(人民軍)の強化など、軍の弱体化を図った[3]

1960年に始まったコンゴ動乱では、国際連合コンゴ活動に参加しコンゴ国内に進駐した[4]

1969年、酔った軍人による大統領批判を端緒として、上級将校の大規模な逮捕・追放が行われた[3]

1970年11月22日、首都コナクリの港にポルトガル軍と元ギニア軍人が上陸作戦を敢行、ギニア軍が迎撃する事件があった(緑海作戦[3]。当時ギニアでは隣接するポルトガル領ギニア(後のギニアビサウ)の独立派武装組織を援助しており、訓練拠点となっていたほか、捕虜としたポルトガル兵を抑留していた。このためポルトガル軍が捕虜奪還作戦を計画し、さらに国外に逃亡していた元ギニア軍人が政権転覆を目的にこれに便乗したものであった[3]。ポルトガル軍は捕虜を奪還した後で撤収したが、元ギニア軍人による政権転覆は失敗し、同日中にギニア軍によって制圧された[3]。ギニアの要請で国連安保理が非常招集され、調査の結果12月8日にポルトガルに対する非難決議が採択されている[5]

1971年3月に発生したシエラレオネでのクーデター未遂事件では、自国軍を信用できなかったシエラレオネのシアカ・スティーブンス首相の要請により、シエラレオネへ部隊が派遣された[6]

1979年4月、リベリアの首都で反政府デモが暴徒化した際は、リベリア政府からの要請を受けて小部隊が派遣された[7]

1984年3月にトゥーレ大統領が死去すると、4月3日にランサナ・コンテ大佐が軍事クーデターを成功させ、軍事政権を樹立した(1984年ギニアクーデター英語版[8][9]。翌1985年7月にはコンテ大統領に対するクーデター未遂事件があったが、失敗に終わっている[10]

1991年に始まったシエラレオネ内戦では、シエラレオネ政府側で支援を行った[11]。内戦中にシエラレオネの反政府軍はギニア本国へ何度か攻撃を試みており、1999年3月には反乱軍がギニア領内に侵入し、ギニア軍が撃退する事件があった[12]。また2000年9月にもシエラレオネから反乱軍が侵入を試みたが、ギニア軍が1か月に及ぶシエラレオネ領内への空爆を行い、侵攻を断念させた[13]。ただし、これによりギニアに隣接するシエラレオネのカンビア県はインフラが壊滅した[13]

1998年6月に発生したギニアビサウでのクーデター未遂事件では、ギニアビサウのジョアン・ヴィエイラ大統領の要請を受けてセネガル軍と共にギニア軍が派遣された[14]

2008年にコンテ大統領が死去すると、ムサ・ダディス・カマラ大尉が軍事クーデターを成功させた(2008年ギニアクーデター[15]。翌2009年9月には軍事政権への抗議デモに軍が発砲し、少なくとも87人が死亡する事件が起きている[16]

2021年にもクーデターが発生し、軍の特殊部隊が暫定軍事政権を成立させている(2021年ギニアクーデター[2]

兵力

ギニアは徴兵制を布いており、2025年時点で陸軍8,500名、海軍400名、空軍800名の計9,700名の現役兵を有している[1]。また、このほかに国家憲兵隊1,000名と共和国警備隊1,600名、民兵7,000名が存在する[1]

陸軍

1個機甲大隊と5個歩兵大隊のほか、空中機動大隊、特殊作戦大隊、レンジャー大隊、コマンド大隊、大統領警護大隊、砲兵大隊、防空大隊、工兵大隊、通信中隊で構成されている[1]。重装備は主に冷戦期に供与された旧ソ連製で、老朽化が進んでおり一部は稼働状態が疑問視されている[1][17]

過去に複数回大統領や暫定大統領を輩出したこともあり、国内で強い政治力を有している[17]

装備

機種名 画像 種別 バージョン 運用数 備考
装甲戦闘車両
T-54[1] 主力戦車 8[1] 稼働状態は疑問[1]
PT-76[1] 軽戦車 15[1]
AML[1] 装甲偵察車 AML-90[1] 2[1]
BRDM-1[1] 装甲偵察車 25[1]
BRDM-2[1] 装甲偵察車
BMP-1[1] 歩兵戦闘車 2[1]
BTR-50[1] 装甲兵員輸送車 10[1]
BTR-40[1] 装甲兵員輸送車 16[1]
BTR-152[1] 装甲兵員輸送車 6[1]
BTR-60[1] 装甲兵員輸送車 8[1]
STREIT クーガー[1][18] 軽装甲車 約100[1]
マンバ[1] 軽装甲車 10[1] 稼働状態は疑問[1]
プーマ M26-15英語版[1] 軽装甲車 若干数[1]
プーマ M36[1] 軽装甲車 9[1]
スパルタンMAV英語版[1] 軽装甲車 30[1]
Springbuck 4×4[1] 軽装甲車 16以上[1]
東風 猛士[1] 軽装甲車 不詳[1]
支援・工兵車両
T-54/55[1] 装甲回収車 不詳[1]
砲兵
ZIS-2[1] 57mm対戦車砲 不詳[1]
D-44英語版[1] 85mm対戦車砲 6[1]
M-1931/37[1] 122mmカノン砲 12[1]
M-46[1] 130mmカノン砲 12[1]
M-43[1] 82mm迫撃砲 不詳[1]
M-1938[1] 120mm迫撃砲 20[1]
M-1943[1] 120mm迫撃砲
PH-63[1] 多連装ロケット砲 8[1]
BM-21 グラード[1] 多連装ロケット砲 4[1]
9P140 ウラガン[1] 多連装ロケット砲 3[1]
対空兵器
9K32 ストレラ2[1] 地対空ミサイル 不詳[1]
M-53[1] 対空機関砲 不詳[1]
M-1939[1] 対空機関砲 8[1]
59式(S-60)[1] 対空機関砲 12[1]
KS-19[1] 高射砲 4[1]
歩兵火器
トカレフTT-33[19] 自動拳銃 [注釈 1]
PPSh-41[19] 短機関銃 [注釈 1]
MAT-49[19] 短機関銃 [注釈 1]
Vz 23[19] 短機関銃 [注釈 1]
Vz 25[19] 短機関銃 [注釈 1]
Vz 58[19] 自動小銃 [注釈 1]
AK-47[19] 自動小銃 [注釈 1]
AKM[19] 自動小銃 [注釈 1]
SKS[19] 自動小銃 [注釈 1]
PK[19] 汎用機関銃 [注釈 1]
SGM[19] 重機関銃 [注釈 1]
DShk[19] 重機関銃 [注釈 1]
RPG-7[19] 対戦車火器 [注釈 1]
B-10[1] 対戦車火器
9K11[1] 対戦車ミサイル
9K111-1[1] 対戦車ミサイル

海軍

海賊などの海上犯罪対策を主任務とする[20]コナクリ基地を拠点として若干数の哨戒艇を有するが、財政上の理由のため多くは運用停止状態にある[20]

装備

哨戒・警備艦艇

哨戒艇

  • アントレピド級(スウィフトシップ型[20])×1隻[21]
アントレピド(P328 Intrépide)(1986年 - 現役)[21]
  • Zégbéla Togba Pivi級(VCSM型[20]ないしRPB20型[21])×3隻[21]
(P200 Zégbéla Togba Pivi)[21]
(P250 Alpha Yana Diallo)[21]
(P275 CC Karamoko Cheik Conde)[21]

このほか、少なくとも2010年代までは旧ソ連製のボゴモール級哨戒艇2隻とズーク級哨戒艇2隻をふくむ7隻の哨戒艇が基地に係留されており、不稼働ながら軍籍にあったとされている[20]

空軍

冷戦期はソ連からMiG-15MiG-17MiG-21といった戦闘機を導入していたが、冷戦終結後は退役するか非稼働の保管状態となっていった[22]。また、2010年代まではAn-12An-14An-24などからなる輸送機隊があったが[22]、こちらもすべて退役してしまっている[1]

装備

機種名 画像 バージョン 運用数 備考
戦闘機
MiG-21 [1] MiG-21bis[1]
MiG-21UM[1]
(2)[1]
(1)[1]
保管中[1]
偵察機
Tetras英語版[1] 4[1]
回転翼機
Mi-24 ハインド[1] (4)[1] 保管中[1]
Mi-17 ヒップ[1] Mi-17-1V[1] (2)[1] 保管中[1]
SA 330 ピューマ[1] 1[1]
SA 342 ガゼル[1] SA 342K[1] 1[1]
AS 350 エキュレイユ[1] AS 350B[1] 1[1]
MD 500[1] MD 500MD[1] 2[1]
兵装
R-3[1] 空対空ミサイル[1]

脚注

注釈

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 出典「Jane's Infantry Weapons 2011-2012」では軍・準軍事組織の保有火器として一括記載されており、必ずしも軍では採用されていない可能性がある。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj bk bl bm bn bo bp bq br bs bt bu bv bw bx by bz ca cb cc cd ce cf cg ch ci cj ck cl cm cn co cp cq cr cs ct cu cv cw cx cy cz da db IISS 2025, pp. 477–478.
  2. ^ a b c Aliou Diakité (2018年10月30日). “Armée Guinéenne : sa création, ses mutations, ses campagnes héroïques et ses audacieuses réformes !”. guineenews.org. 2025年10月4日閲覧。
  3. ^ a b c d e ピエール・ビアルネス「旧仏語圏ブラック・アフリカ十七ヶ国の独立二十年来の成果-賃借対照表11」『月刊アフリカ』第23巻第3号、アフリカ協会、1983年3月、18-22頁。 
  4. ^ C.ホスキンズ 著、土屋哲 訳『コンゴ独立史』みすず書房、1966年、128,247頁。 
  5. ^ 『TRAVEL IN SPAIN スペインの旅』世界文化社、1971年4月20日、192頁。 
  6. ^ 「アフリカの潮」『月刊アフリカ』第11巻第6号、アフリカ協会、1971年6月、2-3頁。 
  7. ^ 「アフリカ・ダイジェスト」『月刊アフリカ』第19巻第8号、アフリカ協会、1979年8月、13頁。 
  8. ^ GUINEA'S MILITARY ASSUMES CONTROL; SEALS OFF NATION”. ニューヨーク・タイムズ (1984年4月4日). 2025年10月7日閲覧。
  9. ^ COLONEL IS NAMED GUINEAN PRESIDENT”. ニューヨーク・タイムズ (1984年4月6日). 2025年10月7日閲覧。
  10. ^ COUP ATTEMPT FOILED IN GUINEA; ARMY SEARCHES FOR REBEL LEADER”. ニューヨーク・タイムズ (1985年7月6日). 2025年10月7日閲覧。
  11. ^ 「シエラレオネ情勢 和平合意と和平の展望」『月刊アフリカ』第37巻第5号、アフリカ協会、1997年5月、4-9頁。 
  12. ^ 「在外公館情報」『月刊アフリカ』第39巻第6号、アフリカ協会、1999年6月、40頁。 
  13. ^ a b 中井達哉、中井達哉「紛争終了後の農村地域における開発支援プロジェクトのあり方 ─シエラレオネの緊急援助の経験をふまえて─」『国際協力研究』第22巻第2号、国際協力機構、2006年10月、15頁。 
  14. ^ 「AFRICA TODAY」『月刊アフリカ』第40巻第1号、アフリカ協会、2000年1月、35-36頁。 
  15. ^ Coup in Guinea after president's death”. The Sydney Morning Herald (2008年12月23日). 2025年10月7日閲覧。
  16. ^ 軍事政権への抗議デモに発砲、87人死亡 ギニア”. AFP通信 (2009年9月29日). 2025年10月7日閲覧。
  17. ^ a b 竹内 2014, p. 135.
  18. ^ Guinea Junta acquires armoured vehicles from Streit Group, paid with mineral resources”. military.africa (2025年1月22日). 2025年10月8日閲覧。
  19. ^ a b c d e f g h i j k l m Jones 2011, p. 702.
  20. ^ a b c d e 柿谷 2014a, p. 129.
  21. ^ a b c d e f g Gogin 2025, p. 342.
  22. ^ a b 柿谷 2014b, p. 135.

参考文献

  • Ivan Gogin (2025) (英語). Fighting ships of the world 2025. Part One. A - M. ISBN 979-8315818335 
  • Richard D. Jones, ed (2011) (英語). Jane's Infantry Weapons 2011-2012. Janes Information Group. ISBN 978-071062947-0 
  • The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2025) (英語). The Military Balance 2025. Routledge. ISBN 978-1-041-04967-8 
  • 柿谷哲也『万物図鑑シリーズ 全123か国 これが世界の海軍力だ!』笠倉出版社、2014年10月13日。 ISBN 978-4-7730-8726-0 
  • 柿谷哲也『万物図鑑シリーズ 全164か国 これが世界の空軍力だ!』笠倉出版社、2014年6月23日。 ISBN 978-4-7730-8717-8 
  • 竹内修『万物図鑑シリーズ 全161か国 これが世界の陸軍力だ!』笠倉出版社、2014年11月9日。 ISBN 978-4-7730-8738-3 
  • 『月刊アフリカ』各号、アフリカ協会

関連項目




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