エネルギー源としての水素化物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 00:23 UTC 版)
「水素化合物」の記事における「エネルギー源としての水素化物」の解説
20世紀に入り石炭から石油へとエネルギー構造転換が起こった結果、水素化物である炭化水素が人類のエネルギー消費の大半を担うようになった。化石燃料である石油資源の枯渇は当初より問題視されていたが、21世紀の今日においても、炭化水素がエネルギーシステムにおける役割には依然として非常に大きいものがある。実際1940年代以降より炭化水素の代替となるエネルギーシステムが種々研究開発されてきたがいまだ決定的なものは見出されていない。 電力などエネルギーシステムの一部では原子力、太陽光、風力などの代替エネルギーの利用が進んではいるが、輸送など広く利用され経済性とポータビリティの両立が必要なエネルギーシステムにおいては、炭化水素の代替となるエネルギーシステムはいまだ見出されていない。 一部では、次世代のエネルギーシステムとして水素が脚光を浴びている。水素であれば熱機関のエネルギー源としても利用可能であるし、燃料電池の様に電力を発生させることも可能である。また、原子力、太陽光、風力のような巨大な発生装置と固定化されたエネルギー配給システムに依存しなくても良いという長所を持つため、水素エネルギーシステムは経済性やポータビリティーの面で次世代のエネルギーシステムの有力候補と考えられている。 しかしながら、現在の技術においてはポータビリティの面で水素は炭化水素を凌ぐものとはみなされていない。ポータビリティを満足するには、体積エネルギー密度、重量エネルギー密度の両方を満たす必要がある。水素の重量エネルギー密度そこガソリンの三倍程度であるが、体積エネルギー密度では炭化水素に及ばないため、貯蔵に大きな体積を必要とする。現在の技術レベルで最もエネルギー密度が大きくなる液体水素であっても、メタンガスや石油などの炭化水素のエネルギー密度に比べて4分の1程度でしかない。固体水素も存在するが、必要な温度・圧力が極端に高過ぎる為、現在の技術では製造も保管も困難である。 したがって、現在考えられている経済的に引き合う水素エネルギーシステムは、水素をエネルギー媒体とするのではなく、メタンから合成されるメタノールなど炭化水素を基盤として利用することが検討されている。しかしそのようなエネルギーシステムでは炭化水素エネルギーシステムと同義であることから、金属水素化物など水素源となりうる新規の水素化物が検討されている。
※この「エネルギー源としての水素化物」の解説は、「水素化合物」の解説の一部です。
「エネルギー源としての水素化物」を含む「水素化合物」の記事については、「水素化合物」の概要を参照ください。
- エネルギー源としての水素化物のページへのリンク