アメンの聖妻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 22:35 UTC 版)
女性がより王位継承に関わるようになるのは、新王国時代のことである。中王国時代以降、前述のようにアメン神は国家神として王に厚く崇敬された。アメン神の加護により、王は遠征を成功させることができたとされたのである。ヒクソスを駆逐し、統一を果たした第18王朝王家にとって、自身の王位の正当性を強調することは非常に重要であった。ここで、王妃と王に姿を変えたアメン神との子を次の王とすることで、アメン神の血を受けつぎ王は神性を持つとされたのである。なお、第5王朝に同様の論理が展開されている(ただし神は太陽神ラー)。 このとき、王妃は「アメンの聖妻」と呼ばれ、神の血統の純粋性を保つためには、正妃は嫡出の王女、すなわち王は同じ正妃より生まれた姉妹と婚姻することが理想とされた。もし正妃より男子が生まれなかった場合は、庶出の男子が嫡出の女子と婚姻することにより王位を継承したのである。 しかしながら、男性優位が揺らいでいるわけではなく、女性であるハトシェプストが即位するときには、自身の「アメンの愛娘」という神聖な血統を証明するため、神殿の壁に自身がアメン神の子であることを示すレリーフを彫らせるなどの努力をしている。それでも、後世の王名表(例えばアビドス王名表)には王として記録されていないことや、王家専用のネクロポリスである王家の谷に葬られていないことなど、男性のみがファラオを名乗ることができるという事実は変わりなく存在していたのである。
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