アメリカ数学協会及びロブソンの解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/27 09:41 UTC 版)
「プリンプトン322」の記事における「アメリカ数学協会及びロブソンの解釈」の解説
2002年、アメリカ数学協会 (MAA) はロブソンによる以前の粘土板に対する数学的な解釈に異を唱えた、その粘土板が「正則な逆数の組の表」であるといえる歴史的、文化的及び言語学的な証拠を指摘する調査を発表した。2003年、MAAはロブソンの「プリンプトン322の作者はプロの数学者でもアマチュアでもない。それよりもむしろ作者は教師で、プリンプトン322は練習用の課題であると思われる」と述べた調査結果に対し、レスター・R・フォード賞を授賞した。 ロブソンは別の粘土板「YBC 6967」という、ほぼ同時代の、同じ場所で発掘されたものに基づいて解釈している。この粘土板は次の形式の二次方程式の解法が書かれている。 x − 1 x = C {\displaystyle \scriptstyle x-{\frac {1}{x}}=C} ここで、v1 = c/2, v2 = v12, v3 = 1 + v2, v4 = v31/2 とおく。そうすると、x = v4 + v1, 1/x = v4 − v1 と表される。 これを基に、プリンプトン322の列は次のような値として解釈される。番号順の正則数の x と 1/x について、第1列、第2列、第3列はそれぞれ v3, v1, v4 となる。たとえば、第11行目は x = 2 のときと表される。この解釈では、第1列の左側の欠けた部分の数も補完することができる。この解釈においては、4列のさらに左にあって欠けている列には正則数である x や 1/x が番号順に現れる。 ロブソンはこの粘土板が当時の数学的な「方法、すなわち、逆数の組、幾何学的な図形の切り貼り、平方完成、正則な共通因数での除算といった、書記官の学校で学ぶ全ての単純なテクニック」を表していること、その作者が当時の「ラルサの神殿や宮殿」でよく使われた文章の形式に精通しているように思われることを指摘している。従って、ロブソンは作者が生徒というよりもむしろ「プロの書記官の役人」で、「神殿管理者を経験した」「およそ六人の古代メソポタミアの教師」と面識のある人物であると主張している。 最終的に、ロブソンはプリンプトン322が「同じ数学的な作業を15回、それぞれに異なった規則正しい正則数のグループに対して繰り返している」ことを記している。また、彼女は「このことは教師が生徒に同じ数学の問題を繰り返し練習させ、自分で計算を繰り返すことなく計算の途中でおいた変数や、最終的な答えをチェックすることを可能にしただろう」と指摘している。したがって、プリンプトン322は役人によって書かれたようであるが、「その系統立てられた構成が『教師』の問題リストともいうべき学校の数学文章の部類に最も似ている」ため、それはむしろ役人のために書かれたものではないようである。ロブソンはまた別の粘土板「BM 80209」との類似性も指摘している。 以上より、この粘土板は一連の宿題であり、YBC 6967で見られる手段に基づいて計算の練習をしたものと解釈できる。ロブソンはこれは教師が生徒への課題として出したものではないかと提案している。
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