ねじれ現象の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 07:24 UTC 版)
大統領制に近い首相公選制を採用する場合、首相も議会も国民からそれぞれ直接的に選出されることになることから、首相と議会多数派が一致するという保証はなくなり、首相の所属政党と議会の多数政党が異なるねじれ現象(ねじれ国会)が常態化して国政の停滞を招くのではないかとの問題がある。首相が議会内に安定的な基盤を有しない場合には、立法権を有する議会との対立から国政が立ち行かなくなるのではないかとの懸念である。 この問題を解決するため首相と議会との役割分担(外交や防衛等については首相、内政や特定地域の利害にかかわる問題については議会など)の明確化が必要との意見もあるが、首相も議会も選挙での国民に対する直接の公約であることを理由として互いに譲らない事態が生じるのではないかとの懸念もあり論点となっている。 また、この対立を解消するために制度的に首相と議会の選挙を常に同時に行う制度をとることも考えうるが、国民は議会選挙で首相の所属政党と異なる政党に投票すること(いわゆる交差投票)も自由であるため、ねじれの発生を全く解消できるわけではないとされ、首相公選制を導入するには、このような場合に備えて首相と議会の一定の共存を可能とするシステムを考えなければならないという問題があるとされる。 実際、イスラエルでは首相公選制導入により有権者の投票行動に変化を生じ、首相選挙では大政党の候補者に投票する一方で、議会選挙では自らの利害を最も代弁する小政党の候補者に投票するといういわゆるスプリットチケットがみられるようになり、議会では少数政党が乱立し、公選首相も議会での安定多数確保のために少数政党との連立を強いられた結果、指導力の発揮とはかけ離れた状態となったという指摘がある。 「首相公選制を考える懇談会」報告書の第一案(国民が首相指名選挙を直接行う案)でも、本案の最も重要な問題点として、首相が属する政党が国会では少数派である状態(いわゆる「分割政府」)を生じ、首相と国会の間の政治的停滞・膠着状態が起きかねないという点を指摘しており、また、統治責任が議会と首相に分散することになるため与党の政治責任が不明確化することをも意味すると課題を挙げている。また、同案では首相を選出し内閣を支えることで求心力を保っている政党が更に弱体化し、議員がより地元利益密着型になっていく可能性も否定できないとしている。 これに対し「首相公選制を考える懇談会」報告書の第二案(議院内閣制を前提とした首相統治体制案)は、「分割政府」の心配がないという点では第一案の場合と異なるとされる。
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