なぜ油圧系統が喪失したか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 06:45 UTC 版)
「ユナイテッド航空232便不時着事故」の記事における「なぜ油圧系統が喪失したか」の解説
写真解析の結果、機体第2エンジンや機体尾部に損傷があったことが分かった。第2エンジン右側のファン・カウリング(ファンの覆い)とテイル・コーン(胴体の最後尾部分)が失われ、水平尾翼にも3か所の穴が開いていた。残りの機体尾部そして第2エンジンは、おおむね損なわれずにスー・ゲートウェイ空港の事故現場で発見された。尾部を復元、調査したところ、第2エンジンの第1段ファンとその付近の回転軸は、飛行中に分離したことが分かった。第2エンジンと尾部のうち飛行中に失われた部品は、後述のとおり、後日アイオワ州アルタ(英語版)付近で発見された。NTSBは、油圧喪失は以下のように起きたと結論付けた。まず、第2エンジンの第1段ファン・ディスクが破砕して分離した。これにより、エンジン回転部分の部品が強いエネルギーで飛散し、機体構造部分を貫通した。 事故機のエンジンは、ゼネラル・エレクトリック(GE)社製のCF6-6エンジンだった。このエンジンは、ターボファンエンジンであり、コア・エンジンのジェットでタービンを回す。タービンが回転することで、シャフトで接続された前方のファンが回転する。ファンは、円盤(ファン・ディスク)の周辺に羽根(ファン・ブレード)を多数並べた構造をしている。第1段ファン・ディスクは鍛造チタン合金製で、重量は370ポンド(約168キロ)である。 ファンは直径も重量も大きいため、エンジンには、ファンが壊れた際に破片が飛び出すのを防ぐ「コンテインメント・リング」(封じ込めリング)が設けられている。前方のコンテインメント・リングは、ステンレス鋼製の円筒形で、直径が86インチ(約2.18メートル)、軸方向の長さが16インチ(約0.41メートル)である。このコンテインメント・リングは、ファン・ブレード1枚とその付随物の飛散に対処できるよう設計されていたが、本事故で飛散したのはブレード1枚ではなかった。 第1、第3油圧系統は、右の水平安定板内で油圧管が破断しており、破断面からはチタン合金が発見された。第1段ファン・ディスクやファン・ブレードを始め、一部のエンジン部品には、チタン合金が用いられていた。一方で、周辺の機体構造にはチタン合金は使用されていない。NTSBは、断面のチタン合金を分析し、第1、第3の油圧管は第2エンジンから飛散した破片で切断されたと特定した。 第2油圧系統の油圧ポンプは、第2エンジンのアクセサリー・セクション(補機部)にあった。そして、その位置はエンジンのファン・セクション直下だった。第2エンジンのアクセサリー・セクションおよび油圧配管を含む第2油圧系統の一部は、アイオワ州アルタ地区で発見された。したがって、第2エンジンのアクセサリー・セクション付近にあった第2油圧系統は、エンジン破損時に破壊されたと判断された。 エンジンが破損した直後、パイロット達は油圧3系統すべてで作動液と圧力がゼロになったのを確認している。フライトデータレコーダーの記録では、破損の1分後には操縦翼面は油圧による動きがなくなっていた。油圧系統の破壊は、猛烈かつ突然だった。
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