その他ガイドラインに基づく治療法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 07:53 UTC 版)
「うつ病」の記事における「その他ガイドラインに基づく治療法」の解説
その他のガイドラインにて提案されている治療法には、以下のようなものが挙げられる。 電気痙攣療法 (ECT) 頭皮の上から電流を通電し、人工的に痙攣を起こすことで治療を行う。薬物療法が無効な場合や自殺の危険が切迫している場合などに行う。最近は全身麻酔を使用した苦痛のない方法がとられることがほとんどである(そのため入院も可能な大病院でしかできない)。安全管理も慎重に行われるようになった。前述の場合に有効性が高い治療法であると考える臨床家も多く、保険診療でも認められている。 APA(2010) では治療抵抗性うつ病に対して、ECTが最も効果的(most effective)な治療法としている。NICEのガイドラインでは、重症のうつ病のみに用いられるべき (should only be used)、標準的なうつ病に対しては繰り返しECTを行ってはならないが複数の薬物治療と心理療法に効果を示さない場合は検討できる、予防目的のECTを行ってはならないとしている。 反復経頭蓋磁気刺激療法 (rTMS) 2021年『北欧精神医学会誌』でスタイン・ビェルム・メラーの精神療法研究班らは、うつ病治療に関するガイドラインを論文上で策定した。同ガイドラインにおいて大うつ病性障害(MDD)患者へのrTMSは、NICEとRANZCP(王立オーストラリア・ニュージーランド精神医学会)の両ガイドラインに沿って推奨されている。米国精神医学会(APA)はrTMSを、大うつ病性障害患者の治療法として挙げている一方、難治性うつ病患者の選択肢として言及してはいない。ただしAPAガイドラインの由来は2009年であり、「DTD〔難治性うつ病〕におけるrTMSの新しいエビデンスが過去10年間に現われている」と研究班らのガイドラインは述べている。 NICE (2015) において、rTMSは安全性に関し大きな懸念は無く、「短期間での有効性に関するエビデンスは十分だが、臨床的な反応はさまざまである」とされている。rTMSの使用が検討される患者は通常、抗うつ薬が効果を示さないか不適切であるうつ病患者である。脳の特定部位を狙う際に、画像診断が使われることもある。日本うつ病学会の理事会の見解(2019)では「諸外国のうつ病ガイドラインにおいても、rTMS療法は、1剤目の抗うつ薬が有効でなかった場合の治療の選択肢の1つに位置づけられている」とされている。「うつ病の治療#経頭蓋磁気刺激法」も参照 光療法 強い光(太陽光あるいは人工光)を浴びる治療法。過食や過眠のあることが多い、冬型の「季節性うつ病」(高緯度地方に多い冬季にうつになるタイプ)に効果が認められている。最新ではない2002年のガイドラインでは、冬季うつ病の第一義的な治療法は光療法とされ、抗うつ薬よりも有効性が高いことが確認されている。 また、光療法が非季節性のうつ病の治療に有効であることが実証され、光療法がうつ病に効果があるかどうかは古くから検討されてきたものの、有効、無効の両方の報告があり、有効であることの決定的な証拠はなかったが、2004年と2005年のメタアナリシスによりその有効性が報告されていると、論文にて報告されている。(ガイドラインではない) 2012年の日本うつ病学会によるガイドラインは、季節性うつ病の場合は双極性障害の可能性を念頭に置かねばならないとしている。 ハーブの利用 ハーブとして利用されているセント・ジョーンズ・ワートは、ドイツをはじめいくつかの国では軽症のうつに対して従来の抗うつ薬より広く処方されている。日本ではサプリメントとして市販されている。副作用があり、日本での治療エビデンスは希薄である。臨床研究の結果は成否さまざまで、軽症から中等症のうつに対して有効でかつ従来の抗うつ薬よりも副作用が少ないとする研究がある一方で、プラセボ以上の効果は見られないとする研究もある。コクランレビューによる2008年の報告 によると、これまでのエビデンスからプラセボ群より優れた効果を示し、標準的な抗うつ薬と同等に効果があるが副作用は小さいことが示唆されるという。ただし重度の抑うつには効果が弱いとされるほか、同時に服用した他の薬の効果に干渉することがあるため注意が必要とされる。 セント・ジョーンズ・ワートにおいてもセロトニン症候群の可能性があるので、注意が必要である。
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