しゃれ言葉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 08:42 UTC 版)
大阪では様々な駄洒落言葉が発達した。近世大坂は、「諸色値段相場の元方」である堂島米市場、天満青物市場、雑喉場魚市場の三大市場を擁し、全国の物資・物流の集散地であった。中之島には諸藩の蔵屋敷が並び、「出船千艘・入船千艘」の活況を呈した。こうしてヒト・モノ・カネ・情報が集積する大坂は一大商都であり、商行為にはコミュニケーションが必須であった。 とはいえ、己の利益をただ露骨に表明するだけでは、顧客の心を掴むことはできない。一方、甘言を弄して顧客に媚びるだけではかえって警戒されるし、仮にうまく成約にこぎつけても、すぐに飽きられてしまう。そこで、相手の気を逸らさないようにしつつ、同時に己の相応の利も確保するという巧みな会話力が必要とされた。その際に威力を発揮したのが「しゃれ言葉」であった。依頼・勧誘・哀願・保留・交渉・譲歩・提案・謝絶・皮肉・揶揄・賞讃などを、しゃれを介して柔らかく朗らかに、しかし芯をぶらすことなく、相手に伝えたのである。 しゃれ言葉は人々の日常会話の中で不断に生み出され、多くの人々の共感を得た秀作は残り、意味がとりにくいものや面白みに欠けるものは時代の波に洗われて消えていった。以下に実例を例示する。 白犬のおいど:面白い(尾も白い) 黒犬のおいど:面白うない(尾も白うない) 牛のおいど:物知り(モーの尻) うどん屋の釜:言うばかり(湯ぅばかり) 雪隠場の火事:やけくそ(焼け糞) 五合とっくり:一生つまらん(一升詰まらぬ) 蟻が十匹、猿が五匹:ありがとうござる(蟻が十、五猿) 夜明けの行灯:薄ぼんやり 蛸の天麩羅:揚げ足をとる 竹屋の火事:ポンポンいう 酢屋の看板:上手(上酢) 鰯煮た鍋:(男女が)くさい仲である・どうも臭う ちびた鋸:(仲が)切っても切れない 春の夕暮れ:ケチ(くれそうでくれん) 赤子の行水:金足らいで泣いている(金盥で泣いている) 狐のやいと:困窮している(コン灸) 馬のやいと:貧窮している(ヒン灸) 無地の羽織:一文なし(一紋なし)
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