おもな絞り技法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 08:28 UTC 版)
麻糸で根巻きするだけの簡易な技法のほか、鈎針などを使う絞り括り、長針を用いた縫い絞りなど、「くくる」「縫う」「はさむ」の3種を巧みに組み合わせた様々な技法がある。 絞りの種類を大別すると、「くくり絞り」「縫い絞り」「桶染め絞り」「板締め絞り」の4種が20世紀以降にも継承された。絞り模様は、こうした技法の組み合わせにより多様な種類があり、最盛期には100以上があった。なかでも代表的な絞り模様についてここに記す。 豆絞り(まめしぼり) 芯に豆を入れて布をくくる技法。粒が丸く、大きさがそろっているという利点から古い小豆を使用するのが一般的で、これを3つないし4つずつ寄せて絞り模様とする。1853年の『守貞漫締稿』に記載された「三つ目結」「四つ目結」にあたる。もっとも初歩的な技法であり、豊後から有松地域に伝わり、「三浦絞」等の原型になったとみられる。 手蜘蛛絞り(てくもしぼり) 有松絞の竹田庄九郎によって作られた柄の一種で、下絵を用いない。布地を鉤針に引っ掛け、指先で中心から傘を畳むようにして襞をとり、その皺を寄せるように根元から糸を巻きあげて絞る。 機械蜘蛛絞り(きかいくもしぼり) 手蜘蛛絞りの襞をとらないかわりに、類似の模様をより細かい粒に加工する技法で、手加減で伸縮する鉤針の出入や手廻しで糸巻きする部分を電動機械で絞り上げる。 三浦絞り(みうらしぼり) 鳴海絞の代表的な絞り模様であり、生地の下から指で布を持ち上げ、一粒ずつひっぱりあげながら糸で巻く。配列や技法の変化で「横三浦」「やたら三浦」「筋三浦」「石垣三浦」「大小三浦」「疋田三浦」など多種多様な発展を遂げた。なかでも21世紀の疋田三浦は京鹿ノ子に勝るとも劣らぬ精緻な文様となっている。 嵐絞り(あらししぼり) 明治期に鈴木金蔵によって考案された技法のひとつ。直径約9センチメートルの丸い棒に布を斜めに巻きつけ、その上から糸をぐるぐるに巻きつけて、棒ごと染めあげる。「棒絞」「棒巻き絞」とも称し、細い斜めの絞り柄が入る。 筋絞り(すじしぼり) 1784年(天明4年)の有松大火の後に考案されたくくり技法で、長針で布を縫い、ひだをとりながらきつく巻き上げる絞り。この技法を応用した模様に、「養老絞」「柳絞」などがある。 雪花絞(せっかしぼり) 鈴木金蔵によって考案された技法のひとつ 。三角形をした2枚の板に布を挟み、手に持ったまま染料をつける染織技法。三角形の板の形状や布を四つ折りや六つ折りにすること、折る回数を変えること、複数の染料を用いることなどにより柄に変化が生じ、多様な種類がある。 叢雲絞り(むらくもしぼり) 青い筋の中に白地が残る絞り模様。 杢目絞り(もくめしぼり) 絵付けされた布の線に沿って一定の間隔で平縫いをし、固く締める。不規則に生じる皺が杢目のような模様となる。 唐松縫い絞り(からまつぬいしぼり) 円型や角型や菱型等、左右対称の柄を中心で半分に折り、下絵の線に沿って外側から織った2枚の布をまとめて、順列で何本も平縫いをして、それぞれを固く締める。 折り縫い絞り(折り縫い絞り) 下絵の線に従って布を山折りにし、その山の下を浅く折り畳みながら縫い、固く締める。「つまみ縫い」「山縫い」とも称される。 このほかにも、「鹿の子絞り」「日の出絞り」「みどり絞り」「貝絞り」「巻き上げ絞り」「柳絞り」「帽子絞り」「縫い締め絞り」等々がよくしられている。
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