『真理の勝利』
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「マリー・ド・メディシスの生涯」の記事における「『真理の勝利』」の解説
『真理の勝利』はマリーの生涯に関する絵画としては最後になる作品で、ルイ13世とマリーとの和解が天国を背景にした純粋な寓意画として描かれている。マリーとルイ13世は天界に浮かび、調和、相互理解の女神コンコルディアの象徴を手にして見つめ合っている。コンコルディアはルイ13世からの謝罪と、両者の間に訪れた和平を示唆している。画面下部には時の神サトゥルヌスが真理の女神ウェリタスを天国へと抱え上げ、真実と両者の和解を「白日の下にさらそうと」している。『真理の勝利』では時の神と真理の女神の描写が画面全体の4分の3ほどを占め、残りの画面上部にはマリーとルイ13世が描かれている。マリーの姿態は大きく描写され、ルイ13世より大きな空間を占めている。明瞭に描かれたマリーの身体は画面に向かって正対しており、このことがマリーの重要性を際立たせる機能を果たしている。また、マリーをルイ13世と同じ身長で描くことで、より一層マリーの重要性が強調されている。ルーベンスは『真理の勝利』に描かれている人物像の仕草や視線を効果的に用いることで、マリーの重要性を最大限に高めている。コンコルディアの身体はマリーへと向かい、サトゥルヌスの視線はマリーを見上げている。どちらの神もルイ13世には無関心である。 ルーベンスは『マリー・ド・メディシスの生涯』の他作品と比べて、『真理の勝利』でのマリーとルイ13世をより年齢を重ねた外貌で描いている。両者の真の和解は文字通り天国でしか結ばれなかったのかも知れない。現在では『マリー・ド・メディシスの生涯』はマリーのフランス統治を主題とした連作だと考えられている。ルイ13世の寵臣シャルル・ダルベールの死が、マリーとルイ13世の和解に大きな役割を果たした。1622年1月にマリーは王立議会への再任を果たし、かつての汚名をすすいで名誉を完全に回復した。『正義の勝利』は、マリーとルイ13世の関係修復を通じて真実が明らかになったことを伝えるために描かれた作品なのである。 アンリ4世の死後、摂政としてフランスを統治したマリーの政治的思想として、諸国との外交は婚姻政策によるべきだというものがあった。『マリー・ド・メディシスの生涯』の掉尾となるこの『正義の勝利』は、娘アンリエット・マリーとイギリス王太子チャールズとの結婚に間に合わせるために急いで制作された作品だった。
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