『深海の罠』
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1962年6月5日付、陸軍ウィンスロー少佐から、グリー退役大佐に宛てた手紙にて。グリーは先日、ウィンスローの晩餐に招かれたがいきなり退席してしまった非礼を詫び、理由を説明する。牡蠣を見て、嫌悪感を抱いたのだという。 「 すべて水に群がるもの、またすべての水の中にいる生き物のうち、すなわち、すべて海、また川にいて、ひれとうろこのないものは、あなたがたに忌むべきものである。これらはあなたがたに忌むべきものであるから、あなたがたはその肉を食べてはならない。またその死体は忌むべきものとしなければならない。 」 — (聖書『レビ記』11章10-11節(日本聖書協会、口語訳)より) 2年前キプロス島に駐屯していたとき、部下にジョブリング伍長という男がいた。彼の趣味はスキューバダイブと貝殻収集であり、兵舎にはこれまで赴任してきた世界中の海で集めたコレクションが飾られていた。いつものようにジョブリングが海に潜ってみると、大変珍しい種類の貝を見つける。あえて収集を控え、場所を覚えて毎日観察を続けていると、どうやらその貝は、餌となる魚をおびき寄せるために催眠術のような手法を用いていることが見て取れてくる。やがてジョブリングは、自分が巻貝になるという奇妙な夢を見るようになり、さらに夢の中で自分に近づいてくるダイバーの顔がジョブリング自身に見えてくる。 あるときを機にジョブリングは体調がすぐれなくなり、ついに発作を起こして病院に送られる。続いて正気を失って病院を抜け出そうとし、連絡を受けたウィンスローが駆け付けたときには、「ロッカーにもぐりこんで身をのたくらせる」という奇行に走った末にショック死を遂げていた。 ジョブリングの残したノートを読んだウィンスローは、ノートに記されていた場所に潜ってみる。しかし、そこにあった貝殻は空っぽであった。近くには蟹が群れをなしており、海水にセピア色の液体が混ざって視界が遮られる。その色が、イカや貝類などの体液であると連想したウィンスローは、蟹たちが食っているものを理解し、恐怖に襲われる。さらに食われている怪物はまだ生きており、ウィンスローに視線を向けて近づこうとしてきたが、蟹たちが再びやって来てそいつに群がる。以後、ウィンスローは貝類を食べることができなくなってしまう。彼にとっては、伍長を食するに等しい嫌悪感を抱くことなのである。
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