『タサウウフの徒の教えの解明』
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「アブー・バクル・ムハンマド・カラーバーズィー」の記事における「『タサウウフの徒の教えの解明』」の解説
本書、『タサウウフの徒の教えの解明』(al-Taʻarruf li-madhhab ahl al-taṣawwuf)は、イスラームの歴史における最初の300年間の神秘思想(タサウウフ)を概観できるマニュアル本である。スフラワルディー・マクトゥールは本書に言及して、もし『解明』なかりせば、タサウウフ知られざるべしと言ったと伝えられている。 本書は近代以降も、何度も刊本として刊行されており、1935年という比較的古い時代にアーベリー(英語版)によりアラビア語から英語に翻訳されている。Arberry (tr.) 1935 のほかにも、2008年時点でフランス語・ペルシア語、トルコ語・ウルドゥー語への翻訳が存在し、日本語へもごく一部が翻訳されている。 本書の内容は、Nwyia 1978 によると3つの部分に大別できる。第1の部分は「タサウウフ」「スーフィー」といった語の語源と著名なスーフィーたちの列伝である。第2の部分はアシュアリー派の神学(スンナ派正統神学)とタサウウフの教えとの整合性を示す論述である。第3の部分はスーフィーが経験する神秘的階梯についての解説である。第3の部分には過去のスーフィーの著作あるいは彼らについて述べた著作からの引用が多用されており、ハッラージュ(アラビア語版)に関する引用が特に多い。Arberry (tr.) 1935 は第3の部分をさらに3つに分けた(したがって全体としては5分割している)。すなわち、Arberry (tr.) 1935 及び東長 2008 によると、本書は、(1)序章にあたる語源とスーフィー列伝の部分、(2)スンナ派正統神学との整合性を示す部分に続いて、(3)スーフィーの修業階梯・心的状態の説明の部分、(4)スーフィズムの術語解説の部分、(5)奇蹟や幻視といった現象の解説の部分の、5部に分けられる。 本書の注釈は、ムスタムリー・ブハーリー(1043年歿)によるペルシア語のものが重要である。ハージャ・アブドゥッラー・アンサーリー・ハラウィー(英語版)がアラビア語で注釈したと伝えられるが、現存しない。チシュティー教団のスーフィー、ムハンマド・ギースーディラーズ(英語版)も本書の注釈を残したことが知られている。 カラーバーズィーはホラーサーンのサッラージュ(英語版)と同時代人である。東長 2008 によると、両者とも、タサウウフの教えがスンナ派の神学や法学と整合していることを示そうとしたという、この時期のスーフィーの特徴を共有する。他方でスーフィズムの術語の解説においては対照的な違いもある。たとえば、「酩酊 sukr」・「覚醒 ṣaḥw」について、サッラージュが「酩酊」について多くを語ったのに対し、カラーバーズィーは、「覚醒」により重きを置いた。
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