「住所不定」となることによる問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 04:17 UTC 版)
「ネットカフェ難民」の記事における「「住所不定」となることによる問題」の解説
住所不定の状態が長期にわたる場合、職権消除により住民票が抹消される可能性がある。この場合、新規の移転先が存在しないため、住民票の復活が認められず、浮浪者と同様の法的問題を抱える。 たとえ職があり所得があっても、新規に銀行口座の開設ができない。口座開設にはマネーロンダリング防止のため「犯罪収益移転防止法」(旧「本人確認法」)により公的な身分証明書の提示が要求される(ただし運転免許証やマイナカード、顔写真つきの住基カード、障害者手帳、日本国パスポートは有効期限内なら、住民基本台帳の職権消除のあともこれを証明書として口座を開設できる場合がある)。このほか、クレジットカードや消費者金融の契約時に、住所と勤務先がともに実在することが審査に通る必須条件となるため、信用調査で契約を拒否される可能性がある。 住民基本台帳への登録がないと印鑑登録ができず、実印を必要とする契約(自動車や住宅の購入、金銭の借り入れ、賃貸住宅の契約など)は契約相手に拒否される。「連帯保証人を選任できる人がおらず、賃貸住宅が借りられないから住民登録ができない」「住民登録がないから実印登録もできず、賃貸契約ができない」という悪循環に陥る。現時点で寝泊まりする短期賃貸マンション(ウィークリーマンション、マンスリーマンション)や簡易宿所(ドヤ)が所在する住所では住民登録が受理されない場合があるため、ホームレスが独力で住所不定状態を脱出することが困難な法的障害の一つとなっている。 また、新たに自動車の運転免許証の取得ができなくなる。運転免許証をすでに取得している場合、免許の更新には送付された更新通知書を提示するよう指示されるが、これは必ずしも必須ではない。しかし職権消除により住民登録が抹消されている場合は、法的に「住所が変わっている場合」に相当するため、証明書類の提出を要する。そのため書類不備として受理されず、住所がないため運転免許を更新できない事態が発生する。運転免許証の更新に要求される住所表示は「住民基本台帳法別表第1(第30条の7関係)」により提供される情報に含まれていないため、住所が変更になった(住民登録を失った)事実を隠したまま更新することは可能だが、法的には更新できない。また、住所不定状態となった事実が判明すれば運転免許の更新を拒否される。 自治体に住民登録がされていないということは、居住地で行政サービスを受けられなくなることを意味し、疾病などにより就労が困難になった際に生活保護申請でトラブルになる可能性がある。たとえば「住民票所在地」と「現在地」が異なる場合、現在地自治体が窓口業務をたらい回しにしようとすることもある。生活保護の申請権は絶対性が保証されているが、役所が生活保護の申請自体を不正・違法に拒否する可能性が高い(「水際作戦」と呼ばれる)。本来は職権消除により住民登録がない場合でも生活保護の対象となる(生活保護法第19条二による職権保護)が、やはりトラブルが発生する可能性が高い(生活保護問題も参照)。 また選挙人名簿は住民基本台帳を基に作成されるため、職権消除されて相応の期間が経ったあとは選挙権を実質的に喪失する。住民登録の復活ができれば選挙権も復活するが、住所不定の状況では住民登録が受理されない。このように、公共サービスの受益権や公民権の行使にも支障をきたす。
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