「住民」と「地方自治」の憲法解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 15:30 UTC 版)
「日本における外国人参政権」の記事における「「住民」と「地方自治」の憲法解釈」の解説
賛成論 日本国憲法第93条2項に「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」とあり、これを根拠にした住民権と住民自治の観点からの賛成論がある。 憲法は、選挙権の主体について15条1項では「国民」とし、93条では「住民」としている。学説は「住民」について、「その地域内に住所を有する者をいう」としており、国籍要件をとくに付加していないのが通例である。93条における「住民」は、外国人を含むという保障はないにしても、必ずしも外国人を排除するものではないと主張される。 このほか、地方自治、特に地域的正当性と国家的正当性の観点(二重の正当化論)から賛成論が主張されることがある。「二重の正当化」論においては、地方自治は、地域的正当性と国家的正当性の両方によって支えられる。地域的正当性とは、国家意思と区別される「住民」意思によるもので、国家的正当性はその淵源が「国民」にあるが、外国人に地方選挙権を認めても、この正当性は切断されずに保たれる。なぜなら、地方自治体の高権行為は、法律に基づき法律の枠内で行われる(条例も法律の範囲内で制定される)からである。つまり、93条の「住民」に外国人を含める解釈は、国民主権原理と矛盾しない。したがって、参政権付与は国防や外交といった政策に影響を及ぼさず、住民自治であり国民主権に反しないとする見解がある。15条1項が国民主権原理(1条)から派生するものであるとすれば、93条2項は直接的には地方自治の原則(92条)から派生する。住民である外国人の選挙権を排除することは「地方自治の本旨」に反する。 最高裁判決 これらの請求に対して最高裁の判断は、93条2項における「住民」はその区域に住む国民を意味するとした。これは、93条だけでなく国民主権原理(前文および1条)、15条1項、その他も併せ考えたうえでの判断である。そして、地方参政権(93条2項)は、外国人に保障されないとした。一方、憲法8章の趣旨から判断して、地方参政権の法律による付与は外国人に禁止されていないとした。結局、地方参政権については、外国人には憲法上保障されないが、禁止もされていないという。また外国人の参政権が制限されるのは、参政権は前国家的権利ではないためである(#外国人参政権と人権に関する法学通説参照)。
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