「主要評伝」と「補足評伝」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 10:05 UTC 版)
「ローマ皇帝群像」の記事における「「主要評伝」と「補足評伝」」の解説
「ヒストリア・アウグスタ」の特徴の一つとして皇帝だけでなく、帝位請求者や帝位を継げなかった後継者についての伝記(補足評伝)を含めている点が挙げられる。ルキウス・ウェルス、アエリウス・カエサル、アヴィディウス・カッシウス、ペスケンニウス・ニゲル、クロディウス・アルビヌス、ゲタ、ディアドゥメニアヌスなどが典型例である。 これら僭称帝・後継者候補についての補足評伝は殆ど正確性を持たず、文学的な技法と意図的なフィクションで彩られている。唯一例外的なのがルキウス・ウェルスについての評伝であり、悪名の高い補足評伝の中でも珍しく多くの出典が添付され、同著の信憑性を低いと評しているロナルド・セイムも同評伝だけは信用に値すると論じている。補足評伝の存在は同著の信憑性を著しく下げている要因の一つで、著者が事実に基かないフィクションで話を盛り上げる事を許した。読み物としての脚色はガリエヌス帝の時代に成立したという「三十人政権」のエピソードで頂点に達した。 更に著作の後半(カラカラ帝以降)になるにつれて「主要評伝」も「補足評伝」と同じくらい、露骨な脚色と虚偽に溢れていき、マクリヌス帝の伝記に至ってはなんら出典を持たない。惨憺たるありさまはヘリオガバルスの伝記で少し改善されるが、アレクサンデル・セウェルス帝の伝記で、その分量は全ての評伝でもっとも長いにもかかわらず「ただの寓話」へと再び戻っている。 こうして点について歴史家達からは、「明らかに著者は何の出典も参考にせず、代わりに自らの創作能力を披露する事に終始している」と指摘されている。それでも若干の信用性ある出典(ヘロディアノスやデキフィップら)を使用しているが、大部分は創作であって史料は断片的な引用でしかない。
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