▲5八金右超急戦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 09:40 UTC 版)
この戦法は対策と言うよりは対抗して攻め合う戦法である。第1図の局面から▲5八金右(7手目)と上がり、後手が攻め合いを選ぶとこの戦型が生じる。 △持ち駒 - ▲持ち駒 - 第4-1図 ▲5八金右超急戦(7手目▲5八金右まで) 第12期竜王戦七番勝負において、全局振り飛車宣言をしていた鈴木大介に対抗するために藤井猛により急遽考案された戦法であり、同棋戦にて初めて指された。 ▲5八金右の後、△5五歩▲2四歩△同歩▲同飛(11手目)と進む。12手目は△5六歩と△3二金があり、△5六歩と進むと超急戦となる(第1号局では鈴木は決戦を避け、△3二金と穏やかな進行を選んだ)。12手目からは△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△3三角▲2一飛成△8八角成▲5五桂△6二玉(20手目)と進むのが定跡である。後手番の方が先に駒得をするが、19手目の▲5五桂が有力である。▲5五桂に後手が次の両取りを受けようと20手目に△5四銀とすると、▲3三角の王手が有力で、後手はどう受けても馬が素抜かれ、先手勝勢となる。そのため、必ず△6二玉とあがり、その間に▲1一竜と進む(第4-2図)。 かつては第4-2図以降、22手目には△9九馬が多く指されていた。△9九馬と香を取った手に対して、▲6六香や▲3三角(室岡新手、第4-3図)などが有力とされていたが、タイトル戦でも登場すると次第に研究が進み、その後も数多くの手が指されていくにつれて、未解決あるいは形勢不明のまま指されなくなっている手もあり、それだけ複雑で難解な局面とされていた。 しかし、△9九馬に対する▲3三香と打つ手(第4-4図)が当時奨励会三段の都成竜馬により発見された。△2二銀打には▲3一香成△1一銀▲4一成香で2枚替えの上、打った銀も働いていないため、先手良し。▲3一香成△同金には▲1二竜△1一香などがあるが、先手が指せるとされている。そのため、△9九馬ではなく、△5四銀や超急戦を受けない研究もされている。第78期棋聖戦第4局、▲渡辺明vs△佐藤康光戦では、後手の佐藤は△5四歩としている。以下▲6三桂成△同玉▲6六香△7二玉▲7五角△5一飛と進んでいる。 また14手目△5六歩▲同歩の後、ここで△8八角成とせず△5七歩と金の頭に歩を叩く手が2010年代後半から指され、有力であるというのが共通認識となっている。以下▲同金であると△8八角成▲同銀△3五角があり、▲4六角としても△2四角▲同角△6二玉である。このため△5七歩には金をかわすが、▲4八金は△8八角成▲同銀△3三角▲2一飛成△8八角成で居飛車側の左辺が薄く△5七歩のくさびも大きい。よって歩打ちには▲6八金とする。以下同じように△8八角成から△3三角▲2一飛成△8八角成となれば、次に△7八銀で、以下▲同金には△同馬で、先手他の手では攻め足が鈍れば△6九銀成から△5五馬▲同歩△同飛等があり、前述の変化より得をしているとみられている。 △持駒 銀歩 ▲持駒 角香歩二第4-2図 超急戦(21手目▲1一竜まで) △持駒 銀香歩 ▲持駒 香歩二第4-3図 室岡新手(23手目▲3三角まで) △持駒 銀香歩 ▲持駒 角歩二第4-4図 都成新手(23手目▲3三香まで) 基本的に▲5八金右として、この急戦策を誘って来る相手であれば研究していて自信があるはずであり、後手も△5六歩で前述の△3二金を指して変化すればかわすことができる。△3二金以下は▲4八銀△6二玉▲6八玉△5四飛と浮き、さらに▲7八銀△7二玉▲7九玉と先手の用心には△2三歩▲2八飛に△3五歩などが、進行例。 また、後手には▲5八金右に対して△6二玉と囲いを優先するなどもあり、決戦を回避する選択肢としてこの順もタイトル戦では久保利明や谷川浩司が指した例があるものの、数は少ない。 いずれもこの超急戦は短手数で終局することが多く、研究量が物を言う勝負になりやすい。
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